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 ふたりの楽屋

 

       

 

 

 

 

 

 



ついさっき一部の収録が終わった。
次の収録まで少し時間があるからそれぞれが楽屋へと戻る中、
俺は建さんとちょっと話込んでいたら結構時間が経ってしまった。

それでも楽屋で一息つく時間はまだまだありそうなので
とりあえず一旦戻って楽屋のドアをあけてみると…

「おぉっ!?」

入口にドカッと立ち尽くす人物が邪魔をして入れない。
だから俺は、

「べぇしっ!!」

と、その後頭部に軽くチョップをくらわしてやった。
すると。

「あぁっすみませんすみません。」

やたら小声で謝るマネージャーを不思議に思ったその時。

「おぉ?なんか怪獣入ってきたな…まぁええわ。」と剛の声。

そこで初めて気がついた。
部屋の真ん中で剛がラジオ撮りをしていた事に。

「あれ?そうやっけ?」
「剛さんの回の分だけです。スケジュールがあわなくて急きょ…」

俺の独り事にこっそり状況を伝えてくれたマネージャー。
そんな俺達が気になったのか、、

「えっ?わし、ラジオ録っとるから」

と、チラチラとこっちを伺ってたあいつからも一言と

「なんやねん、べぇして」というツッコミもしっかり貰ってしまった。

 

・・・ほんまよう聞いとるな、あいつは。


これはラジオ中は迂闊な事言われへんな、と自分に言い聞かせて、
俺はいつもの場所へと移動した。

するとゲージの中にいたパンが俺をみて嬉しそうに尾をふる。
普段は楽屋内は自由にさせているパンだが、
ラジオ録りの為に仕方なくここにいれられたんだろう。
まぁでも、俺がきたから大丈夫。
パンをしっかり抱き上げると、

「なぁパン。今、剛はお仕事してるから、
 大きな声で鳴いたり、邪魔しにいったりしたらあかんで?」

パンの目をみながらそっと言い聞かせると、
わかった!と言うかのように俺の鼻をひとなめするからほんまに可愛いやつやw
しばらくパンを相手に隅っこで遊んでいたら、
ふと、剛の声が聞こえなくなったので何気に顔をあげてみると―


あ…目ぇおうてもうた。

あ、なんか笑われた。

しまいには・・・


「しょうもないお題に対して1人で真剣に考えますけど…
近くにアイツいますけどねっ」


だから俺が居る事をばらすなっいうてんのに…
まぁ、マネージャーの頭小突いた時点で、
自分からバラしてもうたんかもしれんけど。

それにしても、剛のラジオ何気におもろいねん(笑)

「“ウルトラマンはなぜ胸のタイマーでタイムリミットを怪獣に知らせるのか”
 っていうね。うん。これはもぉ怪獣にっていうよりも視聴者やねぇ、やっぱり」
「あははははっ」
「んっふふっ」

このあまりにもズバリな回答に、俺は思わず笑ってしまった。
すると、剛も一緒になって笑ってやんの。
ってかこの話題、俺も一緒に語りたくてウズウズするわ(笑)

ウルトラマンはほんまツッコミどころ満載やからな(笑)
あの胸のタイマーがピコンピコン鳴ってから、最後に必殺技スペシウム光線やで?
初めからそれ使ってたらすぐに怪獣倒せるっちゅうねんっ!!

“ナライガー”の話も、前に剛から聞いた日に
家に帰ってからつい検索してもうた(笑)
以外にカッコええからびっくりしたけど(爆)

なんて…
気が付いたらアイツに絶えず視線を向けてる自分が、
視聴者のようにアイツの話題を楽しげに聞いてる自分が
ほんのちょっと恥ずかしく感じて、
慌てて視線を反らして体制を変えようと動いたその時。

「さぁ、ということでね。
 明日も軽快なトークいきたいと思いますけど。
 お相手はKinKi Kids堂本剛と・・・」

…と?…とっ!?

突然こっちに振られて若干焦りつつも

「おぉえ~い…バイバ~イ!!」

なんとかしめくくってみる。
結局、剛のラジオにちゃっかり出演してしまった俺がいた(笑)



そのまま、次の日の分の録りに入る剛達。
時間が限られているから、進行も早い。
相変わらずの軽快さで剛のラジオ録りは順調に進む。

そして二日目も半分くらいを録り終えたところで、
急に楽屋前の廊下が賑やかになったから、
思わずそっちへと目を向けると、まさに楽屋の扉が開いて
誰かが顔を覗かす。

・・・あれ?っと思ったら、
さっきまで入口に立ってたマネージャーおらんやんけっ!!
こういう時の為に、そこに立ってたんちゃうんかいっ!!

やのにどこ行きおってん、アイツはっ!!

そうこうする内にまさに楽屋に入ってきそうになるから
俺が説明をする羽目に(汗)

「ちょっとごめんなぁ、ラジオ収録しとるけどなっ」
「えぇ!?」

面倒やけどちょっと声を張り上げて相手へと伝えたら、
もちろん剛のラジオを遮る形になって…
挨拶にきた相手も慌てて頭を下げて謝るから、
俺もつられる様に謝ってみる。

剛はというと、せっかく真面目にラジオトークしていたのに
それを横から遮られたとあってブーブー文句を垂れる始末(笑)

「…誰やねん、俺がめっちゃしゃ」
「ごめんごめんごめんっ!!」
「んっふ(笑)俺がめっちゃ喋ってる時にもぉなんか」
「ちょっと挨拶にきよんねん」
「挨拶にきよる…しゃ~ない…そらしゃ~ないわな」

なんやかんやいいながらも、
こういうプチハプニングを楽しんでいる剛だと俺は知ってるけど(笑)

すると!?

「ちょっとラジオの人すいません!!ちょっと待ってっ!!」

何を思ったか、ラジオスタッフに一言そう告げると、
突然席を立って扉に向って走り寄る剛。
思わず俺も、何事か!?とアイツの行動を目で追っていると、
どうやらたまたま楽屋前の廊下を横切ろうとした真治くんを扉の隙間から見つけたようだ。

・・・ほんまによう見とんな、あいつは…


剛は面白いカモを見つけたかのように瞳を輝かせ
真治君の手首を掴んで楽屋へ引き入れ、
真治君は状況が把握できずに瞬きさせながらも、
気がつけばちゃっかり剛とラジオトークを繰り広げていた…


こうなると、正直面白くない…

俺、ここにおんねんけどな。
なんで、俺やのうて、あいつが剛とトークしてんの。

それも真治くん、何気に剛の扱い上手なってきたし…
剛、めっちゃ楽しそうやし・・・

ってか、なんで楽屋に人あげとんねん。
俺、気になってゆっくりできんやろが。
ラジオ中やからテレビもつけられへんし、
やる事ないから手持ち無沙汰やし…

真治君は剛とのトークに夢中やけど、
なんとなく俺が居心地悪くて、さらに隅の方に寄ると
そこらへんにあったものを手に取って1人の世界に籠ってみる。

“はよ帰れや”と、そっと心の中で呟きながら。

それでも嫌が応でもfutariの会話は耳に入ってくる。
最初はグダグダなトークを繰り広げてて剛の笑いも絶えなかったが
以外に真治君が真面目に語り出したのに対して
剛の言葉数が少なくなってきたのがちょっと気になって
俺はチラリと視線を向けみると・・・


また目があってもうた。

それも、その目が俺の今の心境を見透かそうとするかようで
俺は慌てて視線をそらす。

すると、未だ熱く語ってる真治君の言葉を不意に遮るように…

「ありがと、も~いいですわっ」
「新しく…」
「もう大丈夫です」
「どうして?」
「とれだかあったんでもう大丈夫です」

ここが一番伝えたいところ!とばかりに、熱く語る真治くんに対して
いともあっさりとそう言ってのける剛…

真治くんはというと、中途半端に言葉を切られながらも
大人の寛大さで笑いに変えてくれるええ人や。
そのまま、空気を読んでさっと楽屋を後にしてくれるもんだと思ってたのに、
不意のまさかのこの発言。

「初めてキンキの楽屋に入りましたっ」
「あれ?そうでしたっけ?あっそっか、
 今まで絶対なんか入れんの嫌やったから入れてなかったですもんね」
「っていう事は今からそういう関係?」

どういう関係やねんっ

「んっふふふふふっ」

剛もわらっとらんとなんかツッコめや(笑)

「後、ぼく驚きなのが、光一さんってあんなに静かに隅っこでいられる人なんですね」
「そうそうそうっ」
「動物園のー」
「うん」
「爬虫類の―」
「ふはははははっ」
「お~いっ折角みにきたんだから動けよぉw」

ひどい言われようやな(笑)

なんて、2人して観察よろしく盛り上がった後、
やっと楽屋を後にした真治君の背中を見送って。

おぉ~やっと帰った。
やっと帰ったわぁ~

俺の本音。

なんかちょっと気疲れでゴロンと横になってからは、
剛の声も遠くに感じながら、その後の時間を過ごした。


そして…
10分程やろか。
少しウトウトしかけていた時。


「…びっくりしたっ、いきなり…いきなりきたから」

決して大きくはない剛の声に、
それでも、ハッとなって体を起こした俺も一緒になって驚いた。

何故なら、さっきまで俺の横で一緒に丸まってたパンが
いつの間にやら剛の膝の上にいるから(爆)

やべっ!!つよしっごめんっ!!

と思いつつも、剛はというと膝の上のパンを撫でながら
気にせずそのままトークを続けている。

ちょっとだけ申し訳なく思いつつも、
パンもおとなしくあいつの膝の上で丸まってるからいいかっと、
結局そのままで、俺はまたゴロンと横になった。





2人一緒の楽屋にいながらも、
いつも間逆な事をしている事が多い俺達。

一度だけ剛から

「俺ら別々の楽屋にした方がええんちゃう?」と言ってきた事があった。

てっきり、剛がそれを望んでいるのかと思ったから。


「お前がそうしたいならそれでもええよ」
「・・・」
「つよし?」
「…俺はこのままがええ」
「じゃあこのままでええんちゃうか」



俺は、この空間嫌いじゃないで。



今も剛の声を聞きながら、
しょうもないポエムに笑いがこみ上げる。
剛の想い出はいつも俺と重なる。
短パン、ハミパン(笑)
おかしくも懐かしい想い出…

ほんま、いろいろあるなっ(笑)


「さっ、という事でございまして、
 皆さん、またお会いしましょう。
 お相手は堂本剛でした、さよならっ」



  ふふっ お疲れさん、つよし。


 

       -finー






オマケ☆



「やぁ~と終わったわ」

腕にパンを抱きながら、光一のいる部屋の隅へとやってきた剛。

『お疲れさんお疲れさん』
「真治くんにはほんま参ったわ~」
『お前が連れ込んどいてなにゆうとんねん』
「んっふふふ。」
『それも剛より真剣に相談にのってたし』
「まさか、あんなに熱く語られるとは思わんかった」

そう言いながら、そのまま光一の隣に腰を下ろす。
そして時計をチラリと見やって…

「もうそろそろ次の収録の時間やな」
『あぁ、お前もゆっくり出来んかったな。』
「それをいうなら、君もね。」
『え?』
「もう余計な部外者はいれへんから」


あの時の、剛の視線の意味は、
そんな少なからずの後悔があったのかなと思うと、
それもまた愛しくて。
光一はその言葉には応える事なく、あえてその顔を覗きこむようにー


『あのさ、一つゆうてもええ?』
「…なに?」
『僕は思う、かけすぎっ』
「んっふふふふっ」
『三日間連続って何考えてんねん(笑)』
「わかりやすくてええでしょ?(笑)」
『なにがっ!!』

「君がそばにいるよってこと(笑)」



  楽しいことに 満ちあふれている

  毎日じゃないけれど

  大切なことは 君がそばにいること

  分かったのさ



そう。

いつまでも、

きみのそばにいるよ





   終わりw

 

 

 

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