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「ボクの後ろがキミの場所」

 

 

 

 






機内にアナウンスが流れ、
一つ大きく伸びをすると腰をあげる。

乗物に乗ると、ついつい眠り込んでしまう光一は、
飛行機から降り立った後も、暫くはその眠気を引きづったまま行動をとった。

マネに促されるままに荷物を受けとって、
荷物検査も通過して誰よりも早く長蛇の列から解放される。
同じく行動を共にしていた光一のマネージャーだが、気になることを思い出し、
「ちょっと待ってて」と光一へと声をかけると慌ててどこかへと駆け出していった。
聞いてるのか聞いてないのか微妙な素振りの光一だったが、
それでも言われるがままその場に荷物をおき腰を下ろすと、
声をかけられるまでと自分に言い聞かせ、そっとその瞳を閉じたのだった。


その頃の剛は—

「なんやねんっ!さっきから全然進んでへんやんけっ!」
「なんか、前の方で女性の人がもめてるみたいですよ。」

金属探知器前の渋滞の列のただ中にいる剛は、
苛立たしげに言い放つと、そのすぐ後ろにいた後輩が身を乗り出して確認した前方の状況を伝えた。

「空港はこういうのがいちいちめんどくさいから嫌やねん」

ブツブツと小さく文句をいう剛に相槌を打ちながらもふと、
さっきから一度も姿を見ていない光一が気になって、
列からはみ出さないぎりぎりの位置を保ちながらも、体をよじって前後左右にと視線を飛ばす。
すると…かなり先の壁際に凭れ、ちょこんと小さくなってみんなを待つ彼を見つけた。

「剛君、光一君はもう一足先にここ通りぬけて待ってるみたいですよ!」
「あ、そうなん?あいつ、いつのまに—」
「でも、俺達の後ろにもまだ何人もいるみたいですし、結構時間かかりそうだなぁ。」
「ほんまなぁ、もっとこう~簡単に処理できるようならんのかいなっ」
「ですよね~」

と、まだ今少し時間がかかりそうな雰囲気に思わず小さなため息が漏れた二人だった。

そんな剛たちをただただ待ち続ける光一だが、
これといってすることもなく、うつらうつらと一人睡魔と闘っていると—

「堂本光一さん、こちらです。」

突然、目の前に立ったスーツ姿の男に声をかけられた。
まだどこか半分意識が飛んでいた光一はその声にハッとなって、
慌ててスーツケースを引っ掴むと、素直にその人の後ろをついていく。

マネージャーが「待ってて」と言ったことなどすっかり忘れて…

「はぁ~やっと抜け出せた…」
「かなり時間かかりましたね~」
「・・・で、光一は?」
「…あれ?さっき、あの壁際にいてたはずなんだけど・・・」

辺りを見回しながらも記憶にあるそこへと二人、歩いていこうとすると、

「堂本さん、少々こちらでお待ちになってて下さい。」

急に女性係員に声をかけられ、何事かとその足を止めた。
その女性は、次々と現れるメンバーたちに声をかけながら去っていく。
「そういえば光一君のマネの姿もみませんよね?」言われて、
剛は「まさか?また迷子!?」とこれまでのことを思い起こし予感する。

あいつならありえるかも・・・

程なくして、ほぼ飛行機に乗り合わせた同行者メンバーが揃ったというのに、
肝心の光一の姿がなく、今更に光一待ちだと気付かされた。

「なんで光一待ってんの?あいつ俺らよりも先に出て待ってたはずちゃうの?」
「いや、そのはずだったんだけど、ちょっと目を離したすきにいなくなったみたいで、 
 彼も今必死で探してて…あ、帰って来た。」

剛のマネがしどろもどろ話す中、携帯片手に戻ってきた光一マネ。

「ほんとにどこ行ったんだか…携帯も繋がらないし。」
「なんやねん。また迷子になってもうたんかいな…」
「いや、それには懲りてひとりでは行動しなくなったはずだったんだけど…
 待っててって声かけた時も、後ろ振り返ったらちゃんとその場にいたし。」
「はい、それは僕もみました。光一君確かにここに座ってましたもん」
「だったら、一人でどこいったんや?あいつ・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」

それぞれの頭には「トイレ」の三文字ぐらいしか浮かばない。
剛は、小さく舌打ちし
「ほんま手のかかる王子様や…」と呟くと、荷物を放り投げて駆け出した、がっ!



「待って!剛っ!!  光一からだっ!!」




・・・・・・・・




声をかけられたままに素直についてきたものの、
ふと周りをみたら自分一人しかいなくて、マネージャーがいないことにも今更に気がついて、
もしかしてもしかしなくても、自分は皆と逸れてしまったのかも?という不安が押し寄せた。

「あの・・・」
「こちらでお待ちになっててください。」
「あ、はい…」

ここは何処なのか?他のメンバーはどうしたのか?
聞くよりも先に、突然何処ともしれない場所に一人にさせられてしまった光一…
まだ空港からでてはいないにしても、やっぱりこのまま一人で待ってるのはさすがに躊躇われ、
光一は慌てて携帯を取り出した。
飛行機に乗る前に切っていた電源を入れ、急いでマネージャーへと電話をいれたのだが—

「光一っ!!お前どこにおんねんっ!!」

聞こえてきたのは、まさかの剛の声で。

かなり焦ったような声に、
自分がいないことに彼らにも心配をかけさせてしまったことを知る。




「剛・・・」

マネージャーにかかってきた電話を取り上げて、
咄嗟に呼び掛けた剛だったが、携帯の向こうから聞こえてきた確かな光一の声に、
とりあえずホッと息をつく。

「光一、今どこにおんねん。みんなお前を待ってんねんで?」
「俺も、お前ら待ってるもん。」
「いやいや…待ってるのはこっちですから…ええからどこや、そこっ」
「・・・知らん。こっちやって言われたままついてきたから、どこかもわからん…」
「誰についていったん…お前はぁ~」
「やって、堂本光一さんこちらです、言うからさ。」
「・・・なんかようわからんけど、とりあえず空港からはでてへんやんな?」
「うん、でてへん」
「じゃ~そっから見えるもの教えて。」
「ん~なんかヘリコプターがとまってる。」
「ヘリコプター!?」

今いる自分たちの場所のガラス窓越しからは、飛行場には旅客機しか見あたらない。
光一はもしかして、建物の側面の方まで移動しているということなのだろうか?
剛たちは、空港の係員に事情を伝えて光一のいる場所を推測してもらう。

「光一っ!もう絶対そこ動くなよっ!携帯も切るなやっ!!
 おとなしく待っとくねんでっ!」
「・・・わかった」


その5分後、剛たちは無事、光一を見つけることができた。
剛に言われたようにその場所から動くことなく、持っていたスーツケースに腰をおろし、
携帯片手に、どこか心細そうな雰囲気を漂わせながらも、
しかし、剛たちに気がつくと「待ちくたびれたわぁ~」と小さく愚痴ってみせた。

     ほんま、心配かけさせる人やわ。。。


光一に出会えた瞬間に、どっと疲れが押し寄せた剛だったが、
それでも、その待ちぼうけ姿がとても30になろうかという男には見えず、笑いがこみ上げる。

     ほんま、子供みたいな人やねんから(笑)


今度こそ、揃ったメンバーで移動しながらも、剛は光一に何度も何度も言い聞かせる。

「あなたは一人でさきさきいかんと、もうずっと俺の後ろをついてきなさい。」
「なんでやねん」
「そんな、誰かれに簡単について行くような人、心配で先歩かされへんわっ」
「(笑)」
「いっそ、俺のここ掴んで歩いとき」
「あははっ!ここ?(笑)」
「んふふ」


さっきの出来事を笑話にして話す二人の少しあとを歩きながら
実は、光一がいなくなったと知ってどれほど剛が心配していたかを一部始終見てた後輩は、
後でその時の様子をじっくり光一に語って聞かせてあげようと、そっと心に決めた。
そして、剛の服の裾を掴んで笑ってる光一を見て、

  ”そうやって後をついて歩くのはほんとに剛君だけにしてくださいよ!”

と、思わずにはおれない彼らであった(笑)




          

fin

 

 

 

 

 

 

 

大分MCトークのヒトコマをかなり忠実にお話にしてみました(笑)
スーツ姿の男の人だったら知らない人でもついていくのか?と聞いた剛君に
「ついて行く]と答えた光ちゃん(爆)
MAも剛君も「怖い怖いこの人~!」と笑いにしながらも実はすごく心配してたようです♪
光ちゃん!誰かれついていっちゃ駄目だよ~(笑)


 

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