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 誕生日記念小話・・・

 





  

 

 

 

 

100文字のLove Song














あれは、今から3時間ほど前の出来事。
たまたま目の前のテーブルに置いていたスマホに一通のメールが届いたのとほぼ同時に、
なんとも珍しい相手からの着信・・・


届いたメールを確認しようと開きかけたその時に遮るように鳴り響いた着信に
思わず驚きながらも、俺は素直に電話に出た。


「もしもし?」


すると、相手は繋がった途端に開口一番。


「メールみた?」
「メール?あぁ、受信には気ぃついたけど、開く寸前でお前がかけてきたからまだ読んでへん。」
「よかった・・・」


心から安堵しきった呟きに、俺は思わず眉を寄せる。


「突然なんやねん」
「悪い。ほんま申し訳ないけど、メールはそのまま開けんと削除して。」
「・・・なんで?」
「・・・なんでも」
「送信相手でも間違えた?」
「っ!そうっ!! 間違えてもうたっ!! 
 だから剛には関係ない内容やから、即効で削除ー」


と、言いかけたところで不意に声が遠くなって、
誰かともめている様な会話が小さく聞こえた。


思わず不安になって。




「光一?」




そう名を呼んだら・・・


「もしもし?剛っ。」
「!?・・・ながせ?」
「おぉっ!久しぶり~!!」


なぜか光一の代わりに長瀬がでた・・・








「今、光一と一緒におんの?」
「そう。前から会おう会おう言ってたんだけどさ、なかなかお互いのスケジュール合わなくてさ。」
「・・・」
「で、ようやっと今日、ほんと久々に光一に再会して、一緒にメシ食ってんだけど」
「ふ~ん・・・で、用件はなに?」


俺の誕生日を目前に、光一が長瀬と会ってる。
それがなんとなくおもしろくなくて、長瀬に対してつっけんどんな言い方になる。
すると。


「うん、今も横で“消せ消せっ”って光一が煩いんだけど、
 さっき剛に送りつけたメール、俺が光一に書かせて俺が勝手に剛に送信したものなんだよね。」
「・・・は?」
「話せば長くなるんだけどいい?」
「ええよ、わかりやすく説明して」
「わかった(笑)」


それは、久しぶりに2人で会って、食事をしながらの合間の会話で、
明日は俺の誕生日という話題になったという。

長瀬が「剛宛にメールとかプレゼントとかしないの?」と聞くと「何も考えていない」と光一。
まぁ、それはいつもの事だから、大して気にもしなかったけれど、
長瀬にしてみたら「あまりにも長い付き合いなのにそれは寂しすぎる」と熱弁したようで、
「そもそも光一にとって、剛はどんな存在なのか、いい機会だから聞かせて」と、
軽く酒も入った勢いで詰めよったらしい(笑)

俺がもし、光一にそんな質問しようものなら見事にはぐらかされるのなんて目に見えてわかる。
でも長瀬は、聞分けのない駄々っ子のように、大きな体を摺り寄せて光一に懇願したらしく
「言葉にするのが恥ずかしいなら、最低100文字で文章にして」と条件をつけた事で
さすがの光一もしぶしぶ頷いて
持っていたスマホに、普段言葉にしない俺への想いを綴ったというのだ。


それを確認した長瀬は、何を思ったのか・・・
そのまま光一のスマホを弄だし、勝手にメール作成して、
その文章をまんま俺宛に送ったのだという。


それが、長瀬が話した今回の真相。


「最近、つくづく思うわけよ・・・俺自身、年を重ねてさ、
 メンバーに対する気持ちも、こぉいろいろとね、感謝する想いも深くなって・・・」
「うん。」
「光一と剛は2人だからさ、いちいち言葉にしなくてもちゃんと伝わってるんだって
 わかってはいるんだけどね。
 でも、ずっと2人を見てきた俺だからこの際、光一の言葉で聞かせてほしいなって。」
「・・・」
「で、読んだ瞬間、これは剛にこそ伝えるべきだ!!ってそう思ったから、
 勝手に指が動いちゃって(笑)」
「そりゃ、光一が焦って電話してくるわけやな」
「剛が、光一の望む通りにメール削除するならそれでかまわないけどさ」
「うん」
「書かせたのは確かに無理やりだったけど」
「ん?」
「光一の想いはホンモノだから」
「・・・」
「すっごく愛されてるよ。剛、
よかったな。」
「・・・そうなん?」
「言われた通り、きっかり100文字でまとめるところが光一らしいんだけど(笑)
 剛に対する想いがすごい伝わって、じ~んってきちゃった。」
「そんなん聞いたら、読みたなるやん。」
「読みたかったら、即効電話切って、読んだらいいじゃん。
 まぁ。確実に俺、光一に怒られっけど・・・(笑)」
「んふふっ・・・そういえば光一は?」
「なんか、途中で居た堪れなくなったのかトイレにでも行っちゃったのかな。

 ちょっと、いたずらが過ぎたかなって、今頃反省してみたり」
「・・・俺がそのメール読まんかったら、丸く収まる話やろ」
「光一的にはね。」
「・・・なぁ。」
「うん?」
「いつ、光一を解放してくれるん?」
「解放って!なんか俺が光一拉致ったような言い方やめてよ~(笑)」
「んふふふっごめん。
 光一戻ってきたら、伝言してもらってもええかな?」
「うん、いいよ。」
「・・・待ってるって」
「うん、わかった」




   「ずっと待ってるから」って・・・








結局、光一と代わることなく、長瀬との通話を切って
俺は、暫しメールボックスに記されている「1」という数字を見入っていた。


ボックスをタッチしたら、そこには光一からのメールが届いてる。

光一が俺のことをどう思っているのか・・・
知ってるつもりではいるけれど、
それが光一の言葉でちゃんと伝えてくれているのなら、読んでみたい、とそう思う。


長瀬だけが知って、俺は知らない、光一の俺への想い。


それってちょっとずるいやん。


「俺がそのメール読まんかったら、丸く収まる話やろ」って言ってはみたものの、
せっかくの長瀬からの好意を、いっそ有難く受け取って
光一には「削除した」って言ったらいいだけの話では?とも思わなくもない。




そして、うそを突き通せばそれでいい。






そう、自分に言い聞かせ・・・






俺は意を決して受信ボックスを開けた!!






でも。




「ありがとう」から始まった最初の文字だけでもう、潤んだ瞳はすべてをぼやかして

結局、その先を読むことは叶わなくてー



俺はそのまま静かに目を閉じると


光一の望みどおり


指を横へとスライドさせたのだ。











それが・・・


今から3時間ほど前の出来事。

結局、誕生日を前にして目にすることなく削除してしまった光一の想いはでも、
きっと、自分の想いとシンクロしているんやって感じるだけで、
不思議な程に、感情が溢れだして止まらない。

そしてそれは突然、メロディーとなって頭の中をかけめぐり、
俺は、慌ててギターを手にすると無我夢中で音符を追いかける。

つけっぱなしのテレビではいつの間にか生放送が始まっていて、
でも、後輩から電話がかかってくるまでは、
曲作りに没頭していた俺はまったく気づかなくて(笑)

結局、生電話を終えた10分後に、

35歳になって作った最初の曲が完成した。



それからさらに15分ほど過ぎた頃・・・



光一がやってきた。







ドアを開けたその先に、てっきり光一が突っ立っているものだと思っていたのに、
確かにインターフォンが鳴ったはずなのに、光一の姿はない。
慌ててドア向こうへと顔を突き出して左右を確認すると、
なんとも気まずそうな雰囲気を漂わせながら、

ドア横の壁に張り付くように光一が立っていた。



「いらっしゃい。」


俺はあえて、なにくわぬ顔で光一へと声をかけた。



「こぉいち」
「・・・」


それでも微動だにしない光一に、いっそ聞こえみよがしにため息をつくと。


「心配せんでも、即効でメールは削除したから安心し」
「・・・うそや」
「なんで誕生日迎えて早々にうそつかなあかんねん」


ちょっといやみっぽくそう告げた瞬間、


「そっかっ。もう今日やったな。」


光一はハッと我に返ったような顔で呟いたのを横目で見ながら、

「ええからとにかくはよ入り、真夜中に近所迷惑やろ」

そう言って、今度こそ光一の腕を掴んで、強引に部屋へと招きいれた。







「ほんま、長瀬にしてやられた・・・」
「長瀬のいたずら好きは今に始まった事ちゃうん、お前が一番しってるやろ」
「そうやねん、そうやねんけど・・・」


光一をリビングに通して、いったん落ち着かせた後、
俺は、無実を立証するように、削除してもう残ってないメール画面を光一に見せた。
すると、まだ少し疑い眼を向けつつも、やがて自ら反省したように頭を垂れて、
「ごめん」と、ポツリとそう呟いた。

そして、今度は光一の言い分を聞く羽目になったのだが・・・


「剛とはどうなの?最近、仲良くやってる?から始まって、
 気が付けばTOKIOのメンバー愛を永遠語りだしてやな」
「まぁ、TOKIOがほんま仲のええグループやのは俺らも十分知ってるけどな」
「やろ?それをあいつは、いちいち俺らと比べるように、
 KinKiもそろそろ、俺たちみたいに何でも腹割って話し合って、
 それこそ剛とのメンバー愛も深めていかないとやばいよ?って真顔で詰め寄られて・・・」
「相変わらずそういうの語らせたら熱いなぁ~長瀬は(笑)」

「そんな心配してもらわんでも、俺らは十分仲ええっちゅうねんっ!」

珍しく光一が勢いに乗ってか、さらっとそんなこと口にするから
俺は思わず目を丸くする。
すると、返事がないことに今更不安になったのか?

「仲・・・悪くはないやろ?」

と、再度問いかけてくるから。

「んふふふ、TOKIOに負けん位、仲ええですよ(笑)」

笑ってそういったら、心底安心しきった笑顔になってまた熱く語り出す。

そんな光一をみて「さすが長瀬やな」と、光一には聞こえないように

俺は小さく口ごもる


悔しいけど、光一のことちゃんとわかってるわ・・・

お互いを「親友」と呼び合ってるだけあって、
ほんとに仲がよくて、そして、お互いをよく理解している。

とくに長瀬は、何事にも熱血で、それでいて情に深く、心配性で涙脆い。
どちらかというと、感情表現が苦手で引っ込み思案だった光一に、
犬のように人懐っこく寄っていき、光一の心を開かせた長瀬だったから、
光一の扱いは誰よりもうまいのかも知れない。

基本、恥ずかしがりやで余計なことばかり考えて、本心を晒せない光一に、
あえて自慢話をもちかけて対抗意識を持たせることで本音を語らせる。
それはきっと、同年代の長瀬だから光一もムキになるし
親友といえる長瀬だから、素直になれる。

もしかしたら・・・
あくまで勝手な俺の憶測だけど、
2人一緒に飲んでてふとした光一の言動に長瀬なりに何かを感じ取ったのかもしれない。

いつだって俺たちのことを何気にきにかけてくれる、ほんとにええ奴やから。
俺にも言えない何かに悩むこいつの背中を


後押ししてあげたのかも・・・



そう行き着くと、やっぱり光一の綴ったメッセージに何かヒントがあるような気がして、
読まずに削除してしまったことを、ひっそり後悔してみたりもするが・・・

まるで自分に言い聞かせるように、俺は光一へと言った。


「まぁでもええやん。もう過ぎたことやし。
 お前は久々長瀬にあって、楽しい時間を過ごした。
 俺は俺で、35になって最初の曲をちょっと前に完成させた。」
「・・・曲?」
「そう、曲。メロディー浮かんだから速攻で仕上げた。
 自分なりにええのできたって思うから。

 ・・・なぁ、よかったら聞いてくれへん?」

「今?」
「うん。夜中やからボリュームは下げるけど(笑)
 この35年を振り返って。
 そして、その半分以上をお前と共に歩んでこれたことにー」




感謝して・・・



光一が俺のことをどう思っているかなんて今はもうどうでもよくて。
多くの言葉なんていらない。
「仲ええ」と力説してくれるだけで想いはちゃんと伝わってるから。


だからキミからのメッセージに応える為に、
俺の想いを歌に込めよう。

年月を重ねるほどに、キミという存在は俺の中で大きくなるばかりで・・・

ただ、誕生日を迎えた自分の隣に、今も変わらずにキミがいてくれる。

もう、それだけで十分。



出来上がったばかりのメロディーに、
あふれ出す想いをそのままに歌にしてのせたら、
暫し、無言で聞いてた光一の顔がみるみる変化していってー


突然・・・




「お前なぁ~!!しっかり読んどるやないかぁ~!!!!!」





キレた(汗)




「えぇ~!?突然、なに!?」
「なに?ちゃうわっ!!読んだのはしゃ~ないとして、それを歌にするのは何事やっ!! 」
「ちょっ!ちょ~待ってって!!読んでへんってさっきからゆうてるやんっ!!」
「じゃ~今の歌はなんやねん(汗)なんで俺の言葉、まんまラブソングになっとんねんっ」
「・・・」

突然光一が怒り出した理由がなんとなくわかった。
最初に言っておくが、メールはもちろん読んではいない。
だったら何故?
それは、とても簡単な理由で・・・

互いに想ってる気持ちを言葉にすると、驚く程に一緒だった。

ただそれだけ事。


「すっごく愛されてるよ・・・剛、よかったな。」


そんな長瀬の言葉が蘇る。
とたんに、言葉にならない想いがこみ上げて、
今も顔を真っ赤にしてる光一に、俺は無言で抱きついた。


「おぁっ!? なんや突然!?」
「なぁ、俺、さっきから何度も誕生日やってゆうてんねんけど」
「あ、忘れてた・・・」
「おめでとうもないんかい」
「話そらすきやな?お前(笑)」
「話戻されたら困るの、お前やで?(笑)」


誕生日を迎えた真夜中に、抱きあいながら馬鹿みたいな会話を繰り広げる俺たちは、

相思相愛らしいKinKi Kids(笑)

これからも、しょうもないことで怒って、泣いて、笑って、
そんな風に共に年を重ねていきましょう。


 2人で・・・ずっと。















「で、光一さんからは何かメッセージとか届きました?」

翌日に跨った生放送でナナナに問われた俺は・・・

「・・・あいつからは、来てないなぁ・・・」

そういうことにしておこう(笑)
でも。

「今、たぶんね、食いついてみてると思うんですよ。あいつのことやから・・・うん。」


長瀬のおかげか、長瀬のせいか・・・
結局昨日の誕生日は、光一からはまともに祝ってもらえずで(笑)
誤解が解けた後に、反省したらしい光一が今日の生放送後に会おうと珍しくも誘ってくれた。

プレゼントに車か土地を用意してくれてるやろうか?
楽しみや(笑)

そんなしょうもないことを語っていた少し前の
たった12秒の番組内でのハッピーバースデーに、

実は光一から、まさにギリギリの12秒間にメッセージが送られていたことを知ったのは
番組が終了して15分後の事である。

 









タイトルは「35歳、誕生日おめでとう」


それは、きっちり100文字で綴られた再送信メッセージ


 


 見事に重なりあった 

 

   僕らだけのLOVE SOMGー





















     -fin-
 

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