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2014年 9月28日 23時10分―


僕は一足早くテレビの前に落ち着くと
本日、最終回を迎える番組が始まるのを複雑な思いのままに待った

それは、僕自身、いちスタッフとして関わっていた 大切で思い出深い「新堂本兄弟」。


あの日・・・ラストとなるステージを終えての、
今も鮮明にまぶたの奥へと焼き付いた光景を思い出すと、
切なくも感無量の感情が沸き起こる。


きっとこの先も忘れることはないだろう・・・
あの、溢れる涙と、

拍手に包まれた瞬間を―


ふと想いを過ぎらせている間に
時刻は23時15分を指し


本日の新堂本兄弟 ラストライブの幕が開いた。




 

 

 

「LAST  LIVE」

  









実のところ・・・

この日を迎えるまでずっと、
僕はこのことがどうしても受け入れられず、
どこか半信半疑のまま、時を過ごしてきた。

でも、嫌がおうでもこの日はやってきてしまった。

長寿番組でもある、13年半の歴史をもつ「堂本兄弟」に
スタッフとして配属されたのは今から8年程前。
それでも、8年もの月日をKinKiさんをはじめ、
出演者やスタッフと作り上げてきたこの番組への想いは思った以上に深く、
だからこそ、理不尽ともいえる理由で、終了を余儀なくされた今回の出来事に、
誰もが、最後までやりきれない気持ちでいっぱいだった。

しかし、本番も迫るにつれ、
僕たちも干渉に浸るまもなく、ラストライブへの最終段取りのため
慌ただしく駆け回っていたその時。

横切ろうとしたとある部屋のほんの数歩手前で、
目の前のドアが勢いよく開いたかと思うと、

「俺等の何がわかるんですかっ!?」

そんな怒鳴り声と共に飛び出してきた男があっという間に廊下を走り去った。

それが誰なのか。
何があったのか。


その一瞬では皆目検討もつかなかったが、
同じ部屋から出てきたもうひとりを確認してやっと
先ほど飛び出していったのが光一くんだったと気づかされた。

ドア向こうに一礼して振り返った剛くんと目があうと、
彼は少しだけ表情を変えはしたものの、そのまま僕の横を通り過ぎようとしたが。


「剛くん! 僕はこの番組がほんとに大好きでした。
 皆さんとこの番組に関われて一緒にお仕事できたことを幸せに思います。
 今日も、最後までどうぞよろしくお願いします!」

きっと、伝える機会はないだろうと思っていた気持ちを、
僕はいまだ!とばかりに、彼へと伝えた。
それは自分でも驚くほどに、迷いなく、これまでの感謝の想いを込めて。


すると。
少し目を丸くしながらも、
その一瞬後には柔らかな笑みを浮かべて


「ありがとう・・・最後までよろしくね。」



・・・と。

言葉少なにそう返してくれた剛くんは、
でも、いまにも泣きそうな寂しさを湛えてて―

ふいに、先ほど飛び出していった光一くんの後ろ姿と重ねたら、


   二人はきっと今も様々なものと闘っているのかもしれない。


そう思えて仕方なかった。



それでも―


その後、ライブ直前にステージ袖へと現れた2人は
いつもと変わらない、凛とした空気を纏った彼らのままで。

やがて。
2,000人近くのファンが集ったライブ会場は熱気と歓声に包まれながら、
ラストライブの幕はきって落とされたのだった。



そのライブ構成は、
30分放送に編集するにはあまりにももったいなさすぎると関係者からも声があがるほどの
あっという間の3時間弱の濃厚なLIVEステージだった。

とくに最後に語られた2人のメッセージは、
それぞれの素直な気持ちが表れていて・・・

剛くんは、音楽活動の場が減ることへの未練や
それでも、番組を通じて大きく成長できた事への感謝の想いを、
これまで応援してくれたファンの人たち、そしてー
光一くん、その人に「ありがとう」と深く一礼をしたその姿が、ぐっと胸にくるものがあり。

そして、光一くんはというと、彼にしては珍しくも、
上層部へと挑戦ともとれるような意志の強い発言に驚きつつも、
あの時ー
彼が放った言葉はきっと、部屋むこうにいた上層部へと向けてのものだったのかもしれない。
そう思うと、「みんなで声をあげて」と訴える光一くんの言葉や、
剛くんの「ありがとう」の意味も妙に納得がいって。
だからこそ余計に切なさは増すばかりで・・

こんなにも頑張ってきた彼らから、
どうして今更に、大切な場所を奪ってしまうのか。
気が付けば、自分のことのように、様々な感情が駆け巡り、
悔しいやら悲しいやらで止めどなく涙は溢れ
でも、決して拭うこともせず、僕は最後まで彼らのラストライブを見守った。

そして。
ライブ自体は大成功のまま
13年半の歴史と共に、華やかにその幕を閉じたのだ。


その後、舞台裏では出演者やスタッフたちが再び円陣を組み、
最後の締めにと、今一度、光一くんへと挨拶がふられた。

すでに感極まって涙する人もいる中、光一くんは冷静さを欠かすことなくこう、言葉にした。


「改めまして、ラストLIVEお疲れ様でした。
 13年半にも渡る長い間・・・LOVELOVEの頃を含めたらそれ以上に
 長い付き合いの方もいらっしゃいますが、
 この番組を通じて、ほんとにたくさんの方と出逢い、音楽を学び、
 自分自身の成長に繋がる様々な経験をさせて頂いたと思っております。
 先ほどもいいましたが、このまま終わってしまうのはほんとうに寂しいし、
 また、このメンバーでなにかできたらと、僕は思ってます。
 ぜひその日がくることを願って!
 「堂本兄弟」に関わってくださった皆さん、本当に今までありがとうございました。」

そう締めくくるのかと思われたその時。


   「そして剛くん。」


光一くんは対面にいた彼へと、突然、呼びかけ

そして・・・・



    「ほんとにありがとう」




そう言って一礼をする光一くんの姿は、先ほどのステージ上の剛くんそのもので。
その瞬間、剛くんは片手で目頭を押さえると、堪えきれずに嗚咽を漏らした。
そんな彼に、隣にいたえなりさんが慰めるように肩を抱きながらも剛くん以上に号泣してしまい、
つられる様にメンバーも僕たちスタッフも涙が止まらなくなった。
しかしいつしかすすり泣きもかき消す暖かな拍手が
全員から自然と沸き起こり、その場を優しく包み込む。

それは本当に忘れられない光景・・・

だけど、湿っぽいのは嫌い!と豪語する西川さんや高見沢さんたちの明るい声に、
やがて皆にも笑顔が戻り、
気が付けばいつのまに移動したのか、
当たり前のように隣同士で立ち尽くしていた2人もまた、


そっと笑みをこぼしあった。






今―

テレビから流れる最終回のラストライブをリアルタイムで見いりながら、
僕はそんな舞台裏を思い出す。


いつだって「ありがとう」と、感謝の気持ちを忘れない二人だから。

僕たちもまた彼らの幸せを願わずにはおられない。

なによりも、彼らと共にまた素敵な音楽番組を復活させたいって。

心からそう思う。


その為にも、
さらなるステップを踏んで!

涙を勇気にかえて 新しい明日に飛び出そう

2人の未来はまだまだこれから。       
   

だから、さぁっ!

 
  Let's  Start  Again !!




           

fin

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後になりましたが、ほんとに私の癒しの番組でした。

終わってしまったのはとっても名残惜しいですが、またの復活を願って!!

ほんとにお疲れ様でした、そしてありがとう。

 




 

 

 

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