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rain ―キミと誓った雨上がりの空―

 

 

 

 

 

 





ある日のこと。

「光ちゃん、もうすぐお互いに東京へ引っ越さなあかんやん・・・
 その前に、一度、僕んち遊びにおいでや。
 光ちゃんとこに比べたらちょっと田舎やけど、でも結構ええとこやで!」

そう言って、家までの交通経路を印した手書きの地図を渡した剛に、
目を丸くして固まってしまった光一。
レッスンからの帰り際、少し照れたように視線を逸らして、
「迷わんときてやっ!」と言い残すと、
剛は自分の乗る電車ホームへと走りさってしまった。

その少し前、帰りの新幹線の中で毎週あるはずのレッスンが、
今週末、突然休みになると聞いて「どうする?」なんて話てた二人。
「光一は、なんか予定入れたりする?」
「ん~別に…めったにない休みやし、家でゴロゴロしてると思うわ~」
「ゴロゴロて~(笑) おっさんやんっ」
「やってなんもすることないもん~」
「ふ~ん・・・」

そんな他愛もない会話をしていた二人だったが、
やがて、光一は疲れていたのか、ほどなくして眠ってしまい、
剛はしばらく何事か考えたのち、おもむろに鞄から紙と鉛筆を取り出して、何かを書き始めた。
実はそれが、光一を自分の家まで案内するための地図だったのだ。


あっという間に走り去ってしまった剛の背中を暫く呆然と見つめていたあと、
ふと、手もとの地図に視線を落としてみる。

「剛んち、奈良か・・・」

そこには、光一の住む場所の最寄り駅から自分の家までの交通手段(乗り換え路線も含む)や
運賃まで、どうやって調べたんだろうというくらい細かく描かれたものを見て、
今日、ふいに思いついて自分を誘ったわけではないんでは―と、感じた光一だった。

そういえば剛とは、知りあってからずっと仕事関連で一緒に行動していた事は多くても、
プライベートで一緒に遊ぶという友達的な付き合いはしたことがなかった。
特に、自分から声をかけて相手を誘うということ自体苦手な光一だっただけに、
突然、こんな風に剛の方から誘ってもらえるとは露ほどにも思わず・・・

すぐに返事を返せなかったが、断る気はさらさらなく
「今日帰ってからでも、ちゃんと返事しよっかな…」
戸惑いがちに呟いてはみたものの、その表情は嬉しそうに輝いていた。






そして約束の日。

いつもと違う路線の電車に乗って、
乗り継ぎながら剛と待ち合わせている奈良の西大寺駅へと向かうこと早一時間。
家を出る時も、くもり空を見上げ一瞬悩んではみたものの、
電車の時間もあったから気にせずそのまま走りだしてしまったのだが、
何気に車窓から外の景色に目を向けていたら、案の上ぽつりぽつりと雨が降りだしてきた。

「やば。。。やっぱ傘、必要やったな」

剛の待つ駅に着くころには本降りになっているだろうか…
そんなことを頭の端で気にしながらも、
電車の揺れが眠気を誘いついついコクリと眠りこんでしまった。

程なくして―

ゴトンッ!

と大きな揺れで、ハッと目を覚ました光一。

慌てて辺りを見回すと、降りる駅の2つ3つ手前だったことがわかり、ホッと胸をなでおろす。
そこからさらに15分ほど電車に揺られたところで、目的の駅に到着し、
光一は、剛の地図を確認しながら指示通りの場所へとやってきた。

思った通り、本降りの雨模様・・・

待ち合わせ場所は駅出口すぐ横だったので、
屋根で雨はしのげるもの、剛の姿はない。
時計に目をやると、待ち合わせ時間よりも30分も早く着いていた事に気がついて、
思いのほかスムーズに来れたんやなぁ~と呑気に思ってみたり。

―剛のことだから、案外、待ち合わせ時間よりも早くに迎えにきてくれるやろう―

彼の性格も熟知してる光一にとっては、待つことも苦にならない。
ボーと30分ここで立って待っててもいいけれど、キョロキョロと辺りを見回してみると、
斜め前にコンビニがあったので、

―少しだけ店内で買い物して時間を潰すかぁ~ー

小走りで道路を渡って店へと駆け込んだ。


10分ほどして、買い物したビニール袋と、ビニール傘を手にした光一が店からでてきた。
剛が彼の行動を察知して、光一の分の傘を一緒に下げてきてくれることは望み薄だし、
だからといって、相合傘で一緒に歩くのも遠慮したいと思ったので、
素直に売られていたビニール傘を購入したようだ。

店先で傘をさし、もう一度待ち合わせ場所に戻ろうとしたところで、
先ほど自分が立ってた場所からほど近いところに立っている少女に気がついた。
実は、自分が来た時からすでにずぶ濡れで立っていた少女で、
幼いながらも、誰かを待っているのか?探しているのか、
目をキョロキョロさせて辺りを見回していたので、少し気になってはいたのだが。
今だ、その場所を動くことなく、それどころか座り込んで体を丸めている姿をみたら、
さすがにほっておけなくて・・・
光一は少しだけ躊躇しつつも、ゆっくりと少女に近づくと、自分も屈みこみ

「どうしたん?しんどいん?」

できるだけ優しく声をかけてみた。

「・・・・・」

一瞬、顔をチラリと向けつつも、返事はなく、また小さな顔を伏せる。
たしかに、見も知らない人から声をかけられても、答える人の方が少ないだろう。
光一も、相手がいい年の大人なら、無視されてまで再度声をかけようとは思わないが、
よく見てみると、泣いているのだろうか…
幼い手で、目元を拭う仕草が気になって、もう一度だけその背中に問いかけてみる。

「なんで泣いてるん?」

すると―

「・・・メルがおらへん。」
「メル?」
「どうしよう…」

ポツリと呟いたその言葉だけでは、いまいち話が見えてこないが、
それでも、自分に助けを求めてくれているような気がした光一は、
「何があったか話してくれへん?」と、安心させるような笑顔で言葉を促した。

少女は少しだけ困ったような視線を向けたが、優しい面だちの光一の瞳に
気持ちも落ち着いたのか、今にも消え入りそうな声でポツポツと話だした。

“かほ”という名のその少女が
メルという子犬を連れて歩いていると、駐輪所に繋がれていた大型犬に突然吠えられた。
びっくりした彼女は思わずリードを手放してしまい、
驚いたメルも少女の呼び声空しく全速力で何処かへ走り去ってしまったというのだ。

「一生懸命探したのに、何処にもおらへんくて。」
「さきに、一人で…あ、一匹か。帰ってるってことはないの?」
「・・・友達んとこ行った帰りで、いつもの散歩道と違うから…」
「そっかぁ」
「…メルゥ~」

そう言ってまた泣きだした少女を見つめながら、ホトホト困り果てた光一だった。
ここまで話を聞いてあげてしまった以上、一緒に探してあげないわけにもいなかいが、
剛と約束してしまってる手前、勝手な行動をとるのもどうかと思うし…
でも、やっぱり泣いてるこの子もほっとけない…

暫く考えた末。

「一緒にメルを探してあげるから、少しだけ待ってくれへん?」
「え?」
「お兄ちゃん、今、友達と待ち合わせしてるんやけど、もうすぐ来ると思うし、
 僕はこの街の人ちゃうから、どう探してあげていいかわからへんねん」
「うん…」
「だから、お兄ちゃんの友達来たら、一緒に探してあげる。きっとすぐ見つかるよ!」

大丈夫だからと言い聞かせるように笑いかけると、
少女もやっとつられるように笑顔をみせてくれた、まさにその時。

「光一?」

背後から自分を呼ぶ声がしたと思ったら、

「メルっ!!!」

周りをもびっくりさせるような声を発して、少女は光一の脇を一瞬にして擦り抜けた。

突然の展開に着いて行けず、何ごとかと慌てて振り返った光一の視線の先には、
こちらも状況を掴めてない剛と、その腕の中には何故か茶色の子犬が…。

少女は、剛の元へと駆け寄り、もう一度、腕に抱かれた子犬へ「メル!!」と呼びかけると、
子犬は嬉しそうに尾を振ったのだ。
それを見た剛は、

「このこ、君の飼ってる犬なん?」
「うん!メルっていうの。」
「そっか。よかったなぁ、メル、すぐに会えて。…はい」
「ありがとう…メルっよかったぁ」

腕からそっと子犬を下ろすと、
少女はすかさず、メルを抱きしめて、何度も「ごめんね」と呟いた。
それを見ていた光一は、

「ほんまにすぐに見つかったな」

感心したように呟いて剛の傍へとやってきた。

「どうしたん?何があった?」
「ん~、この子…かほちゃんゆうねんけど、飼い犬がおらへんようになったって、
 ここで泣いてたから、剛来たら一緒に探してあげるわ言っててんけど、
 まさか、お前が連れてくるとは思ってもみんかった…」
「そうやったん(笑) ここ来る途中に、うろうろしてる子犬見つけてんけど、
 首輪もリードも着いてるから迷子かなおもて、でもなんか見過ごす事も出来んくて
 思わずつれてきてもうたけど、正解やったみたいやね。」
「すごいなぁ~つよし(笑)」
「んふふふ」

2人して笑いあってると、光一の服をツンツンと引っ張る存在に気がつき、
ふと視線を落としてみると。

「お兄ちゃん、ありがとう」

さっきまでの泣き顔はどこへやら。
嬉しそうに微笑みながら、しっかりとメルを抱きしめた少女がお礼を言う。

「ううん。ほんますぐに見つかってよかったね。
 今度は、その手を離さないようにちゃんと一緒に帰んねんで?」
「うんっ。」

じゃあねっと笑顔で走り去ろうとした少女をしかしっ。


「・・・あっ!まってかほちゃん!!」

何を思ったのか突然呼びとめた光一は、隣の剛へと首を捻り、

「剛、一緒に入れてや?」
「・・・はっ?」

意味不明の言葉を囁いたかと思うと、傘を持ったまま少女の元へ駆け寄り、

「まだ雨降ってるし、これ差して帰り?」

そう言って、さっき買ったばかりのビニール傘をパッと差して、少女にかざしてあげたのだ。

「でも・・・」
「ええよ、めっちゃ安い傘やからそのままあげる(笑)
 まだ雨降ってるし、お家まで差して帰り。」
「うん。」
「じゃあね。」
「うんっ。ほんまありがとう!」

最後にとびきりの笑顔を見せて、
今度こそ、少女はメルと一緒に雨の中へと消えていった。
その背をずっと見守ってた光一を、ずっと見守っていた剛もまた
ゆっくりと光一の傍へと近寄り、そのまま後ろからそっと傘をかざしてやったのだ。


 ―剛、一緒に入れてや。―


さっきの、光一が自分へと言った言葉をちゃんと理解して・・・











「それにしても、光ちゃんはほんま人がええなぁ。見なおしたで。」
「そりゃ~な? あんな小さい子が横で膝抱えて泣いてたら、無視はできんやろ。」
「まぁ~そうやけどさ。」

雨の中、剛の差す傘に入れてもらいながら、家路へと向かう二人。

男同士の相合傘は遠慮したいと思って、わざわざコンビニで傘を買ったというのに、
結局、気がつけば、剛と相合傘をしながら歩いてる自分を振り返ると内心複雑に思える。

でも・・・
もう一本買おうと思えば全然買えた傘だけど、
剛の差し出してくれた傘に肩を並べて入れてもらえたら、意外にも嬉しくて。
一応、遠慮気味に「ほんまにええの?」って聞いたら、
「もちろんっ!ほらっ、光ちゃん濡れるでっ!」ってさらに密着してくるから・・・
剛がいいんならいいかって気になったりもして。
結構単純な自分に苦笑しつつも、剛との距離間にひっそりと満足していた光一だった。


「でもさ、簡単に犬拾ってきてもうたけど、もし、あの子に会えへんかったら
 お前、あの犬どうするつもりやったん?」
「ん~。そのまま飼ってたかもしれへんな。めっちゃ可愛かったやん?」
「なんやそれ(笑)」
「犬飼いたいなぁ~でも、もうすぐ東京へ引っ越すこと思ったら、それも無理やし…」
「そうやな。」
「でも、いつか生活も落ち着いたら飼ってるかもしれへんわ、僕。」
「うん、なんかそんな気がする。」
「東京で、犬飼ってる自分。。。想像できへんけど(笑)」

そうやって二人未来へと心を飛ばしながらも語りあっていると。

「ほら、光ちゃん肩濡れてるやんっ。もっとこっち寄りっ。」
「えぇ…でも。」
「なに気にしてんねん。」
「剛の家の近所やろ?ここってもう…ええの?誰かに見られても。」
「・・・んふふふ。なんでやねん。ええよっ別に見られても。」
「・・・」
「僕は全然かまわへんよ?光一とこんな風にくっついてんの全然きにならへんよ?ってか、
 光ちゃんの温度感じれて嬉しいくらいやで?」
「んはっ(笑) なにゆうとんねんっ」
「ええやん、光ちゃんとこうやって肩並べて歩けるのが嬉しいねん。
 全然嫌ちゃう。
 逆にこの距離間が僕らちゃうん?ってさえ思う。
 ・・・でも、光ちゃんこそ、嫌なん?離れて歩きたい?」
「そんなことは―ない…けど。」
「うん。」
「剛がいいなら…いいねん。」
「いいよ。」
「うん。」
「うん。」
「じゃあ、遠慮なく…」

と、口ではいいつつもちょっぴ李遠慮気味に剛へと肩を寄せてきた光一に、

「んふふ、照れやさんやなぁ~光ちゃんは(笑)」

ニコニコと笑いながらも、しとしとと雨の降り続ける中を、仲睦まじく歩いて行く二人。


剛は、想い出の場所を通るたびに、指さして「ここがな?」「ここでな?」と
それは嬉しそうに光一へと説明を繰り返し、
光一は、剛の生まれ育った奈良の風景を瞳に焼き付けながら
「うんうん」と何度も相槌をうった。

やがて、剛の家へと到着した二人は、家族の歓迎を受けて
楽しい一時を過ごしたのだった。






それから数時間後―

剛の部屋で、他愛のない会話をしながら二人で寛いでいると、
ふと、窓の方をみた剛が、「あっ!」と声をあげた。

「なんや?」
「光一っ、ちょお見てっ!」

目の前に座る光一の腕をガシリと掴むと、有無を言わせずに窓辺へと引き寄せ。

「ほら。」
「ん?」


剛が指さした空の向こうに―
いつの間にか、綺麗な虹がかかっていた。



2人は、広い庭へと下りてきて、澄んだ青い空を一緒に見上げた。

先ほどまでは、まっくろな雲に覆われ、雨粒を降り注いていた空も、
今は、雨雲は余所へと追いやられ、その代りに見事な虹を浮き上がらせていたのだ。

こうやって、空をゆっくりと見上げる暇もなかった、
慌ただしい毎日の積み重ねだった二人にとって、
なんだか、不思議なくらいこのゆっくりとした時間の流れをしみじみと感じてしまう。

しばらく、言葉も発することもなく二人、ボーとその空を見上げていたが。


「なぁ。光一。」
「うん?」
「もうすぐ、僕ら、東京へでて、本格的に仕事活動するやん。」
「そうやな。」
「なんの不安もない?」
「なんの不安もない…わけでもないけど―」
「うん。」
「でも、この仕事初めてやっと、自分のやるべき事がわかったというか…
 これを逃したら、こんなチャンスきっともう~この先ないと思うし。
 東京にでて、自分の可能性にチャレンジできるほんまいい機会やと思うから。」
「そうやね。」
「これまでの生活にちゃんと区切り付けて、また新しい自分として頑張っていきたいかな。」
「・・・光ちゃんは、強いなぁ」
「なんで?」
「僕は、あかんわ…
 そりゃ、新しい場所で頑張りたいって気持ちは光一と全く一緒の想いやけど、
 この街を離れてしまうのが、寂しくてたまらへん。」
「・・・・・」
「家族も、友達も、想い出もたくさんつまったこの奈良を離れて生活するのって、
 光一のようには、まだ自分の中では区切りがつけられへん。」
「つよし…」
「でもな。」
「うん。」
「今日、光一と一緒に僕の住む街並みを一緒に歩けて、
 自分の記憶にある想い出深い風景を一緒に見れて、
 大好きな家族を紹介できて、
 まさかの奈良の空にかかった虹を二人で見上げることができた今。 
 僕の大好きなこの街の想い出が、
 光ちゃんの中にもいっぱい詰まってんなって思ったら―」
「…思ったら?」
「一緒に頑張れる気がする。」
「・・・」
「僕の大好きな故郷を知ってくれた光一と一緒なら、
 新しい東京での生活を頑張っていこう!って、今、決心がついた。」
「うん。」
「いろいろ迷惑かけるかもしれへんけど、弱音もいっぱい吐くかもしれへんけど、
 末永くよろしくお願いします。」
「ふふふ(笑) 何改まってゆうとんねんっ!」
「んふふ」
「…つよし。」
「ん?なに?」
「えらそうな事ゆってもうたけど、東京出て頑張ろう思ったんも、
 そういう機会に巡り合えたんも、
 剛がいたから、やと思ってる。
「え?」
「剛と一緒やから、頑張ろうって思う。
 剛とめぐり会えたからこそ、一緒にやっていきたいねん。」
「光一…」
「まだなんもわからへん子供な2人やけど、
 いいことも悪い事もいっぱい待ってるかもしれへんけど―」
「・・・」
「一緒にがんばろうな?」
「…うん。光ちゃんがずっと一緒にいてくれるなら。」
「当たり前やん。」
「うん。」
「ずっと一緒や。」
「うん。」



剛が、今日という日、ひとつの決心を固めたと同じく、
光一もまた、もう一つの自分の想いに気がついた。

あの雨の中であった少女に、剛のことを「友達」と、いともあっさりと言葉にした自分。
それまで、剛を「友達」という目でみてはいなかったと思う。

でも、今日の自分たちは、ほんとにごく当たり前の友達のように会話したり、
ゲームしたり、とりとめないことで笑い合った。

友達のように声をかけてくれて一緒に遊べて、
でも、仕事をしたらかけがえのないパートナーで、
東京へ行ったらきっと、
家族よりも剛と一緒に過ごす時間の方が多くなるんだろうと、ふいに感じてみたり。

「友達」であり「仕事のパートナー」であり、「家族」以上の存在でるある剛を
ふと、隣に感じて、
そんな彼と、これからもきっと共にやっていくんだろうな。と漠然と、
しかし、確信めいて。
光一もまた、彼とやっていく決心を固めた。


「あ、そうやっ!」
「今度はなんや(笑)」
「お母さんがな、光ちゃんも夕ごはん食べていってってさっきゆうとったわ。」
「えぇ?」
「きっと今ごろお姉ちゃんと一緒に奮闘してごはんの用意してると思うで(笑)」
「でも―」
「帰りのことなら心配いらんで。
 お父さんが、後からちゃんと車で家まで送ってくれるらしいし。」
「えぇ~!」
「僕も一緒に乗ってくから、安心してええで(笑)」
「なんでや(笑)」
「あ~なんか急に腹減ってきたなぁ~夕飯まだかなぁ?」
「ちょっ、剛っおいって!」
「はいはい、とりあえずお家入りましょ♪
 それとも、雨も上がったことやし、ちょっとブラブラ歩きにいってみよか?」
「お前、人の話きけっ」
「んふふふ」





ふたり、出会った事で
こんなにも僕らの人生は変わってしまうんだね。

でも、だからこそ、
この出会いを大切に、
このままずっと傍にいれたら―

年を重ねていく僕らを
でも決して変わらない僕らを

いつまでも
その美しい空よ、
見守っていて。



「こうやって肩並べて歩けるのが嬉しいねん」


 


雨の中、相合傘で歩いた二人のシルエットは、
きっと、この先も変わらない

僕らだけの距離間。





   

fin

 

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