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                     小話「ラブイズ…」





明日のイベントのリハの為に、ドームへとやってきた俺たち。

 

 

今回は、デビューからの区切りともなる感謝イベント公演なので
ステージ演出の派手さよりも、いかに多くのファンを収容し且つ楽しんで貰えるか。
念入りな打ち合わせとともに、音響や照明、舞台ステージの設置が行われる中で
俺たちも意見交換を繰り返しつつ、リハも進められていく。

 

そんな慌ただしい時間も少し過ぎ去ったころ、
スタッフだけでの綿密な打ち合わせがあるということで
俺たちは互いにあてがわれた控室に、一旦戻る事になった。

 

次に声がかかるまでのほんの一時、食事を取るもよし、
それぞれが好きに過ごせばいいのだが・・・
実は、リハの間中、ずっと気にかけていたことがあったのだ。


どうしようか・・・声をかけるべきか?

 

と、ひっそり悩みつつも様子をみていたが

やはりどうにもほっとけなくて、

一度は腰を下ろした部屋を出ると隣にある相方の控室へとむかった。
 
だが、軽くノックして扉を開けてみたがあいつの姿はない。
しかし長年行動を共にしているだけあって、
あいつがいない理由も、そしてなんとなく今いる場所さえも

自然とわかってしまう自分がいたりする。
 
とにかくじっとしていられない性格。
仕事が好きとは言うけれど、
そこまでする必要が本当にあるのか?と、言って聞かせたい時もある。


 
そう・・・たとえば今。


 
迷うことなく行き着いた先には案の定、

スタッフと会話している光一の姿があった。


こちらに背を向け、熱心に何かを語っている彼はもちろん俺の存在には気づくはずもなく、
足早に近づいて、徐にあいつの腕を掴んで引きよせたら
その場にいた一同が何事かと驚いて俺へと視線を注いだ。
 
『な、なんや、剛!?』

 

もちろん、一番驚いたのは腕を掴まれた光一本人で、
思いのほか真剣な顔つきで腕を掴んで離さない俺に対して、
わかっているのかいないのか?な反応を示す。
 
「ちょ~来て。」
『え?なんで!?』
「ええから。」
 
有無を言わせぬ力で引っ張ると、俺は戸惑う光一を連れて今来た廊下を戻っていく。
そして着いた場所は、彼の控室。
 
ドアをくぐった先でやっと光一の腕を放すと、
俺は一人、部屋奥に置かれたソファーへ腰をおろして、
扉前に今も立ち尽くす光一を見つめながら、あえて無言で自分の隣をぽんぽんと叩いた。


 
『なんやねん。急に』
「いちいち俺が言わんでも、自分が一番わかってるやろ?」
『・・・・・』

 

 

意味深な俺の言葉に、暫く二人の間に沈黙が続いたが、
大きく息をついた後、行動を起こしたのは光一だった。

 

ゆっくりと近寄ると言われた通り隣に座る。

でも、なんとなく居心地が悪いのか視線を合わそうとしない彼に
俺もさして気にすることもなく、

 
「そのまま、ちょ。横になりや。俺が膝枕したるし。」

 

いっそあっけらかんとそう言ったら、
光一はまたもやびっくり顔で俺を凝視した。
 
『膝枕って!なんでお前を枕にして寝なあかんねんっ』
「今しか、休める時ないでしょ。
 俺おらんかったら、またどっか行きかねんしな。
 寝付くまでちゃんと傍におったるから安心し」
『だから、なんでお前の傍で寝る必要がっ』
「いつから、熱あんねん」
『っ!!』


 
図星を指されたとでもいうように言葉を詰まらせる光一。

 

 

こんな時、嘘をつけないこいつは、

俺に対してだけ、こんなにも素直すぎる反応を見せたりする。

 

でも、普段はどんなに体調が悪くても、

基本、態度も表情もほとんど変えない性格の為、
いいのか悪いのかわからないが、周りに気づかれる事はほとんどない。
 
だた、どんなに自分を騙して元気なフリを通していても―

 


   俺にはちゃんとわかるんやで。

 


それでも、俺だって状況によっては見て見ぬふりを決め込む時もある。
あいつがソロで活動しているときはなおさら、横から口を挟む事はしない。

 

 


   でもな。
   今は俺が、傍にいる。
   


 

きっと、そんな俺の気持ちなどとうに気づいているだろう。

それでも、その口から出た言葉は―

 
 『大丈夫やって』
 

 

光一の「大丈夫」
相手に心配をかけさせない言葉、そして自分へとかける暗示。
幾度となく聞いてきた光一の「大丈夫」に、俺も応える。
 
「うん。お前がそういうなら大丈夫やねんな。
 堂本光一という精神は大丈夫なんやと思う、でもな。
 お前の身体は、しんどい言うてんで?」
『・・・・・』
「一人の時ならまだしも、今は俺も一緒におんねんから。

 休める時に、ちょっとでもええから休んどき。」
 
そう、優しく言い聞かせたらさすがに観念にしたのか無言で俯き、

そして・・・

自分の体から聞こえてくる悲鳴をやっと感じとったのかもしれない。

 


 
 「大丈夫」って、ずっとそう言い聞かせてやってきた。
 そう言い続けないと、何かが崩れていきそうで・・・

 

 
いつだったか。

ひっそりとそんな弱音を吐いた光一を俺は知っている。

 

そしてー

 

そんな言葉を言わせてしまったのも、

そんな風にあいつを無意識に追い詰めてしまったのも、

 

俺のせいなんだろうって・・・わかってる。

 

 

 

そう思ったら、俯いて見えなくなった光一の顔が見たくなって

ゆっくりと左手を伸ばしてその頬に触れようとした瞬間、

 

おもむろにパッと顔をあげたかと思ったら


 
「剛、重いゆうなよ!」


 
そう言って、反動をつけながら両足をソファーへと上げると、

俺の太ももを枕代わりに頭をのせて、ごろりと横になったのだ。
 
少し照れくさそうに口元を緩めながらも素直に寝転がった光一を見て、

俺は、思った以上に嬉しさがこみ上げる。

 

でも。

 

 

『なんか思ったよりも寝心地悪い!』

「そら、しゃあないなぁ」

『これやったら座布団、枕にした方がマシちゃうか』

「和室やったらよかったんやけどねぇ」

『・・・まぁ寝れんことはないけど』

「んふふっそれはよかった(笑)」

『笑うなやっ振動がもろに伝わんねん(笑)」

「ごめんごめん(笑)」

 

 

難くせをつけながらも、

なんやかんやで寝心地いいポジションを探して、

何度も俺の太ももに後頭部を押し当てる。

 

そんな言葉とは裏腹の天邪鬼な態度を見せるこいつが本当に愛しくて・・・

 

 

それとともにふいに懐かしい記憶も蘇ってきて、

本当ならそっと寝かしつけてやるつもりが、つい、

この柔らかな2人だけの空間の中で、

もう少し光一と話しがしたくなった俺はー。


 


 
「なぁ、光一」
 
『ん?』
 
「俺な、仕事でお前と別行動とっても、

 最近は、なんとなくお前の居場所わかんねん。」
 
『ん~そっか』

 

「お前の行動範囲狭いせいもあんねんやろうけどな(笑)」

 

『なんやそれ(笑)」
 
「でも昔は、よぉ、お前探して走りまわってたよな、俺」

 

『ん~?』
 
「まだSMAPさんについて周ってた時とかさ、覚えてへん?」

 

『あぁ~!!あったなぁ。よく廊下ですれ違った時とか、

 中居くんや慎吾くんから
 ”さっき剛が不安そうな顔して光一を探してまわってぜっ”て言われたな』

 

 

 

俺同様に、はるか昔の出来事をちゃんと覚えてくれていた光一。

 

あの頃は、それこそ周りの大人に少しでも認めてもらいたくて

一生懸命背伸びして強がってた子供時代だったけど、

ふと我に返ると、そんな自分なんか当に見透かされていて、

誰も相手にしてくれないんじゃないかって急に不安になったり、

孤独感が突然押し寄せたりして。

 

そんな時に、でも光一の姿だけが浮かんで、

 

 

  光一だけは、そばにいてくれる

 

 

って、そう思ったら今度は光一がそばにいないことが不安になって・・・

 

 

「光ちゃんどこや?」って。
 意味もなくお前を探しまわってた自分がいた。

 

 


『剛が探してるって聞いて、急いでお前のところ戻ったら
 すごく安心したような顔したの、覚えてるわ。』

 

「不安に押しつぶされそうになると、

 周りがなんも見えんくらい真っ暗になって・・・

 でも、そんな闇の中でも、光一だけは俺をちゃんと見つけてくれて

 連れ出してくれるって思い込んでて」

 

 

そして、期待通りにお前はいつだって、俺を見つけ出してくれた。

 

 

  『つよし、大丈夫やで!ちゃんと傍におるから』

 


 
そう言って俺に笑顔を向けてくれるお前がいたからー

 

 

    今の俺がここにいる。
    そんな気がするわ。
 

 

 

 

「今、思い返せば、ほんま懐かしい記憶やな。」
 

 

 

遠い日々を思い出しながらポツリポツリと言葉にしていた俺だったが、
ふと、足元に視線を落とすと・・・

 

 

いつの間にか。

 

 

小さな寝息をたてて、
光一は深い眠りのなかにいた。


 
そっと光一の額に触れると、思った通り少し熱い。
 
熱があろうと調子が悪かろうと、
仕事に入れ込むと、自分の事は二の次に廻してしまう。
それなのに、俺が同じように調子が悪いと不安そうに顔を曇らせて
そっと、いろんなことの支えになってくれた・・・
 
いまの自分はというと、子供っぽいところは相変わらずだけど、
それでもこれからは、今まで以上に優しさを届けていきたい。

そして、これからも二人の目指す道を共に歩いていきたいと思う。
 
それは、光一とだから一緒に歩ける道。
 
お前とだから、これからもずっと・・・


 

 

 

 ここにある僕の気持ちをずっと大切にしていたいよ。


 体中で感じた答えは、君と手を繋ぎこの道を歩くこと

 

 ずっと、ずっと前から探していたのは、

 

 終わることのない君との愛の形

 

 うまく伝えられなくて何度も傷つけたけど、

 

 こんなにも誰かを愛しく思えることを何よりも誇りに思うから

 

 これからは、君を支えたい。

 

 こんなふうに優しくなれたのは君が側にいてくれたから。

 

 過ぎてく季節を確かめあって、同じ歩幅で二人で生きてゆこう。

 

 俺たちの未来はいつもこの空の下に。

 

 だからねぇ。

 

 その笑顔をこれからもずっとずっと見ていたいから

 

 このまま傍に居させてー

 

                                               
                                                                                                                                                           

 

 なぁ、光一・・・
    
  きっと、この先だって変わることはない
              
                    
            
     俺たちはKinKi Kids!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


                                                    
                   
                              
                fin・・・

 

 

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