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「SHAKE 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろやな。


と、開演前に向けての身支度に取り掛かろうかと動きだしたその時、
突然、手元に置いていたスマホから軽やかな通知音が響いた。

  ・・・お~い・・・

開いてみれば、最初に届いたのはその3文字だけ。
しかし、待てどもそのあとに続く言葉もなく
ヒゲを剃りながら、画面を見つめること30秒。


「おいおいなんやねん…」


続きが来ないとなると、「お~い」にこめられた意味は、果たして呼びかけなのか問いかけなのか。
一瞬戸惑いながらも、結局「こっちに来い」が略された呼びかけなんだろうと判断し
俺はあえて返信はせずに、身支度の途中のままの姿でしぶしぶ廊下へと出た。

そして、向かった先は、なんてことない相方の楽屋。

 


「入るで~」

ヒゲを剃る手は休めないままドアをくぐると、何かに夢中なあいつの後姿が目に入った。

「なんかようか?」
『おぉ~つよし~』

俺がやってきたことに全く驚きもしないということは、やっぱり呼ばれていたらしい(笑)
面倒がって「ちょっとこっちに来てや」を端折るあいつと、
それでも、3文字に込められた意味を理解してしまう自分。
「お~い」「はいはいお茶ですね」というよくある意思疎通な熟年夫婦のようだと思うとなんか笑えた。

すると、俺へと振り返りながらも光一は、
何故か得意げに手にしたものを目の前で振って見せた。

頭はボサボサ、ノーメイクで黒づくめのちょっと胡散臭い男が必死にペットボトルをシェイクする姿が、
なんでか、高級店のバーテンダーのように様になってみえるから不思議(笑)

「んふふっなにしてんねんっ(笑)」
『これ、振るのこんなもんかな?』
「そんなもんちゃう?」
『そっかっ』

俺に言われるまま振る手を止めて、しばしペットボトルを見つめると
やがて納得したかのように、それを俺へと差しだした。

「えっ?なに?」
『お前の分』
「あ、くれんの?ありがとう。」
『実は、今初めて作ってみた(笑)』
「今、箱、開けたんかいっ」
『うん(笑)よし、次は自分の分作ってみようっ!!』
「これ、もしかして試作品?(笑)」

『(笑)』

光一が何をそんなに楽しげにしているのかというと、話は数週間前に遡る。

 

 

 

 

 

それは、自分たちの番組内での事。
出演者とゲスト・・・と言っても、前番組からの交流深いメンバーではあるが(笑)
全員でプレゼント交換をするというクリスマス特別企画『プレゼント交換会」の収録の為、
俺たちはそれぞれ二組に分かれてショッピングすることになった。

たくさんの店が並ぶ中から、雑貨の豊富な東急ハンズへと足を向け、
数ある商品を目に止めながら店内を探索すること、数分。

ふいにショッピングパートナーである高見沢さんが見つけたある商品へと目がいく。

それは「水素水生成器」

以前から世間で何かと話題の「水素水」について、俺自身も興味を持って検索してみたことがった。
すると、水素水の効果や効能などについて様々と書かれてる中で特に目についた項目があって。

「水素水のメリットは活性酸素の除去
 水素に期待される効果は、体内で発生した悪玉の活性酸素を除去してくれることです。
 この効果を活かすためにも、活性酸素が大量に発生しがちな以下のようなタイミングで摂取すると、
 活性酸素の害から身体を守ることが期待できます。
 •運動やスポーツをする時
 •ストレスを感じた時
 •紫外線を浴びた時
 •喫煙や飲酒時
 •空気の悪いところに行った時
 •睡眠不足の時
 など、水素水を摂取する際は、活性酸素が大量に発生する時は多めに、
 他は適量を1日数回飲む方が効果的でしょう」

これを読んだ時、自分よりもいっそ「あいつにこそ教えてやるべきや」と思った。
1年の半分近く、ハードな舞台をこなしている光一こそ、
身体にいいものはどんどん取り入れるべきじゃないかって。

そう思いつつもなんやかんやと忙しく、今の今までわすれてしまっていたが、

今、思い出したことで俄然、目の前のモノに興味が湧く。

「これは、フィルターを交換しないといけないタイプのやつね」

目につくなり、しっかりとチェックをいれる俺に

「それはダメなの?」と高見沢さんも、一緒になって興味を持ったようで。


「水を入れるだけっていうのがあるんですよ」

「ふ~ん」
「これはフィルターが切れるとまた買いに来なきゃいけないっていう」
「それは面倒だな」

 

高見沢さんの感想はまさにあいつも同意見だろうと、簡単に予想がつくから

さらに真剣に商品を物色するとー

 

「これなに?!」

 

思わず目がいったのがその隣にあった「マジックシェイク」という名の水素水生成器。

それは、市販のペットボトルからたった三分間で、

いつでも手軽に水素水を作り飲む事が出来てしかも 乾電池使用。

そんなスリムボディでポータブルな水素生成機らしい。

 

店員から説明を聞いたうえで、「衛生的で、かつ持ち運びも便利」となるとますます魅力を感じ、

これならあいつも素直に喜ぶやろうって納得する。

 

で、気が付く。

 

これは「番組企画用のプレゼント探し」だったことに。

 

 

 

・・・でもまぁ、あれや。

番組用と、光一用のふたつ買っといたらいいだけの話や。

もし、番組内で光一に当たれば、もうひとつは自分が使えばいいだけのことやし。

これ、正直、俺も欲しいもん。

回りまわって俺に当たってもそれはそれでラッキーやん!

 

 

ってことで。

そう胸の内であっさりと解決して、俺はマジックシェイクを選ぶと、

しっかり番組用とプライベート用に分けて購入したのだ。

 

 

そして・・・

 

 

その後も番組を見てわかるように、

実は一回目で思惑通り、俺の選んだプレゼントは光一に当たっていたのだ!!

思わず心の中でガッツポーズをとったのは言うまでもない(笑)

しかしっ!!

5人中2人が自分のプレゼントに当たるという企画に当てはまらない結果に、

まさかプレゼント交換のやり直し・・・

 


大きなため息とともに「しょうもなっ!」と呟いた心の声は

しっかり口にでてしまっていたが、それはもう致し方ない。

そんな俺の言動を察した光一も何かいいたげに体ごと俺へと向きなおるも、

あえて、気づかぬフリでその場をやりすごし、そして、2回目のプレゼント交換。

 

奇しくも、今度は光一のプレゼントが俺に当たるという、

出来過ぎた展開に思わず笑いがこみ上げる。

 

しかも、あいつの選んだプレゼントというのがなぜか楽器(笑)

 

後に、あいつが「これ見つけた時点で、剛に当たったらおもろいやろな~」

と思って買ったというから

結局のところ、お互いにあげることを想定してプレゼント選びをしているんだから、

我ながらいいコンビだとほんとに思う(笑)

 

でも、残念ながら、俺のプレゼントは光一には当たらなかったわけで、

当たったたかみなに、このプレゼントがなんであるかを説明しながらも

実のところ、ちゃっかり光一の反応をうかがっていた俺。

 

 

思ってる以上に、食いついている。

説明し終えると「すご~いっ!」と感嘆の声をあげるところをみれば

水素水に全く興味がないわけではないらしい。

そして、たかみなに渡す瞬間光一を一瞥すれば、あいつは羨ましそうな顔をしたんだ。

 

俺にはわかる(笑)

 

だから俺は、番組収録後の帰り際ー

 

 

 

『え?なにこれ?』

「俺が選んだプレゼントやん。さっきのマジックシェイク」

『えぇ?!これ、たかみなのんちゃうん!?』

「念のためもう一個買っててん。」

『なんでやねん』

「お前にやろうと思ってたからに決まってるからでしょ。」

『・・・・・』

「正直に言うてな?水素水、興味あるやろ?」

『・・・興味、なくはない・・・』

「んふふ(笑) あったら使ってみよっかな?って思うやろ?」

『――ほんまくれるん?』

「俺も、ええもんもらいましたから、君に」

『ひゃははっ。剛に当たってほんまよかったわ(笑)』

「うん。だから光一もこれ、受け取って」

 

 

そういってもう一つ用意していたプレゼントを、

俺は光一へと手渡したのだ。

 

 

 

 

 

そして今。

 

年末のコンサーツアー初日の開演前の楽屋での二人の会話に戻るわけで。

 

光一は、もう一本のペットボトルを取りだすと、

早速、ミネラルウォーターのボトルへとスティックを差込み 、

スイッチをポチッと入れたその時に。

 

「あっ!」

 

あることを思い出した俺は、素早く移動し、

壁際にある部屋の照明を突然、落とした。

 

 

『え?なんやっ!?』

 

一瞬にして、辺りが真っ暗になったもんだから、思わず声をあげた光一へ

 

「ほらみてみ」そう声をかけた。

 

 

実はあの時、思い付きで買って渡したものだったが、

帰ってからもう一度、その商品がどんなものかを今一度検索して

俺自身、使い方や性能なども知った。

だから俺は、それを一緒に確認したくてあえて周りを暗くしたのだ。

 

 

 

そこには暗闇に浮かぶ、美しい青。

 

ボトルに差し込んだ電極部の付け根部分にあるLEDライトが
電極棒を通じて照らされて、ペットボトル自体が光りだす。

辺りを暗くしてこそその輝きは増し、神秘的な実験を目の当たりにするかのようだ。

 

そして二人して、30秒ほどじっと眺めていると、

電極部分から小さな気泡が生まれ、次々と水面へと上がっていく。

 

すると光一が。

 

『これって電気分解によって水素を発生させてるんやんな』

「そうみたいやね」

『水は、水素と酸素の化合物やてもちろん誰でも知ってるけども』

「そういえば、お前、よう”水の不思議”についてウンチクたれてたな(笑)」

『ふふふっ(笑)いや、知れば知るほど奥深いよっ』

「んふふw」

『ってか、水素発生させるのってもう少し手のかかる装置で作るもんかと思ってたけど、

 こんな手軽に作れるなんて・・・な?』

「技術の進歩ってすごいなぁ」

 

なんだか理科の実験をワクワクしながら受けてるような気分に浸りつつ、共に待つこと三分。

 

ふいに青い光が消えたことで、水素水の出来上がりを知らせてくれた。

 

 

 

「できたできたっ」

 

再度、部屋の照明をつけると、光一は徐にペットボトルを手に取って、

 

『シェイクシェイク ブギ~な胸騒ぎっ♪」

 

陽気に歌いながらシェイクする(笑)

そのままさらにテンションはあがり

 

『超ベリ~ベリ~最高っヒッピハッピシェイクっ!!』

「ノッてるね~(笑)」

 

懐かしの「SHACK」を披露しながらシェイクし終えるとまさかの一気飲み(爆)

あっという間に見事に飲み干したもんだから、笑いが止まらないw

 

「やるね~(笑)」

『ぷは~っ‼! やっぱり水素水っ‼!」

「んふふ 違いわかった?」

『まったくわっからへんっ!!』

「んっふふふっw」

 

 

確かに味が変わるわけでもなし、それが素直な感想だろうと思う。

でも。

 

 

「一回飲んだだけやったらあんま意味ないかもやけど、

 飲み続けてたらたぶん、なにかしらの効果がでてくるかもやし」

『まぁ、舞台中は特に水分補給は俺にとって必要不可欠なもんやから』

「そやな。ぜひ活用して」

『重宝させてもらうわ。ありがとう』

 

 

その素直さでお礼を言ってくるから、たまらなく嬉しい。

 

 やって、俺はその為に買ったんやから。

 

長丁場の舞台。

何事もなく元気でやりとげてほしいから。

 

それだけを、いつだって願ってる。

 

 

 

 

 

 

それにしても・・・

 

 

 

  シューシュー星が流れてく♪

 

 

 

 

光一のおかげで、さっきからSMAPさんの「SHAKE」が頭から離れない(爆)

 


いやいやっSMAPやのうて、KinKi Kidsやし(笑)

 

とりあえずは目の前のコンサート。

 

ふたりで、おおいに盛り上げていきましょう。

 

ほらっ!

 

 

 

しあわせな気分さ♪

 

 

二人ならヤレルヤ♪

 

 

 

 

 

 

 

fin

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