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「誘って」

 

 

 

 

 

 

 



「もぉ~ええわ、腹いっぱい。」

予約していた某焼肉店に、マネージャー二人と共にやってきた光一と剛は、
いつもの定位置の場所に腰を下ろすと、少し遅い夕食にありついた。
のだが―

食べ始めて、ものの15分ほどでのこのセリフに、
後の三人は「はぁ!?」と、一斉に光一へと視線を向ける

「えぇ!?まだ食べ始めたばかりだろ?」
「ほんま、焼き肉が美味しいのは食べ初めて2,3枚くらいまでやな。」
「そんなこと言ってないで、こんな時ぐらいドンドン食べて、
もう少し、自分の肉付けた方がいいんじゃないか!?」
「もう食ったって。」
「まだまだ注文もしてるんだよ!?ちょっと、剛からも、言ってやってくれよ」

そう、マネージャーから突然話を振られた剛は、向いに座る光一に視線を移すが
渦中の人はすでに、食後の一人マッタリタイムに落ち着いている。
付き合いの長い剛は、言って聞く時の彼と、言っても無駄な時の彼の雰囲気を
ほぼ見ぬける唯一の人間と言っても過言ではない。
そんな彼だから、光一を一瞥しただけで案の上何かを悟ったらしい。

二人のマネージャーの求めるような視線を感じつつもまるで焦らすように、
自分の手は肉へと伸びては受皿に自分の食べる分の肉をどんどんのせつつ、
ようやっとでた一言が…

「食べたくなったら食べるんちゃう?」

だった。

どうやら今日は、言っても無駄な日だったようだ。

そんな剛の言葉にあっさりと納得したマネはタメ息をつきつつ、
それでも「せめても」と、別の条件を口にするが―

「肉がいらないのなら、あっさりしたものとか他の好きなもの
なんでも注文してもいいからね、光一。
・・・剛は、ほどほどにね。」

光一の分まで己の皿に焼き肉を積み上げた剛を見て、余計なひと言もしっかり添える。

「人が美味しく頂いてるのに、何か引っかかる言い方やなぁ」
「あはははははっ!!」

気分を害したというように唇を尖らせた剛をみて大爆笑する光一に、
二人のマネも「もう好きにしてくれ」と、それ以上口煩く言うことはなかった。



「はぁ…」

笑うだけ笑ったら、また一人マッタリモードへと突入した光一である。
壁際によりかかり、どこか一点を見つめながら何かを考えているのか、いっそ何も考えていないのか、
そんな空間を満喫してる彼を、もう一度そっと覗った剛は、
ふと何かを思いつくと、パーカーのポケットに忍ばせていた携帯を取り出して、
テーブル下でポチポチ操作すると、最後に一つボタンを押す。

すると、その5秒後に目の前の光一がハッと身じろいで、バタバタと自身の体を探りながら、
ジーンズのポケットにしまっていた携帯を取り出した。
そして、一瞬剛へと視線を向けつつも、すぐに携帯の画面に目をやった光一だったが・・・


「え~!なんやこれ~!?うひゃひゃっうそ~!!」


突然の素っ頓狂な声に、食べながら話し込んでいた二人のマネがびっくりして二人に注目するも、
携帯片手に表情をコロコロ変えて盛り上がってるのは光一だけであって、
剛は素知らぬ顔で、相変わらず焼肉を食べている。

両方のマネから「なんだ?」と声をかけられてる最中にも、

またメールを受信したようで、光一はあわてて手持ちの携帯を弄り


「えぇ~!?すごいなぁ~これ~みたいわぁ~!!」


と、またまたテンション高い「独り言」を言い出す始末。

そんな光一に「ほっておこう」とばかりに、
また自分たちの話に戻ったマネを気にすることもなく、
ひっきりなしに送られてくるメールに、ひたすら爆笑しつつ、
さも、誰かへと聞こえみよがしに、独り言を呟き続ける光一。

そして、そんなメールの嵐もようやくやむと
しばし、何かを考えこんだ様子で微動だにしなかった光一が、
徐に今度は自ら携帯を弄り出し、何故か剛へと掲げてメールを送信したのだ。

すると。
ほどなくして手の中で小さく震えた携帯に視線を落とした剛は、
ゆっくりとメールを開くと…



―ぜひこの目で見たいので、誘ってください―



「・・・・・」

そのまま画面から視線を上げれば、
期待に満ち溢れた笑顔の光一と目があった。

「んふふ」

思わず笑いがこみ上げた剛。
お預けを食らってる子犬のように、
彼からの返事を、じっと見つめながら待ち続ける光一を喜ばせたくて、


「また今度連れてったるわ♪」と、ふわりと笑った。






「ほんまっ!?」

「うん」







結局のところ、二人の間でどんなやりとりがったのかというと―


どうやら剛は、普段滅多に外に出ない光一に、
世の中の面白い風景やお店など見せてやるために、
ネタ満載の写メールをどんどん送り続けていたのだった。

ダジャレの店の看板や、とんでもない笑える商品など、
光一が食いつきそうな写真を、出かけるたびに撮りまくっていた剛。
そして画像もかなりたまった今日、ふと暇を持て余してた彼を楽しませようと思いつき写真を送ると、
思った通りに食いつくほんとにわかりやすい彼なのだ。

こんなにも目と鼻の先ほどの距離でいる二人なのに、
なんとも変ったコミュニケーションをとるのがまた彼ららしくて。


結局、そのネタで食後の話題も尽きなかった光一と剛だった(笑)











 

以前、目撃情報で某焼き肉店に、マネージャーと連れだって食べにきた二人は、
お互い黙々と携帯をやっていたが、どうやらお互いに打ち合っていたようだという話を
思い出しての、突然のショートストーリーになりました(笑)
なんかありえそうじゃないですか?こんな二人(笑)
まぁ、アドレス知らないと未だに言ってる二人ですけどね、まぁ嘘ですけど(爆)

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