top of page

 

鼓動

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久々の二人一緒の収録日。


剛は、最近この日だけはとくに早くに楽屋入りしている。
理由は簡単。

同じグループにも関わらず、めったに顔を合わす機会のない相方に、
唯一会える仕事だからだ。


また二人の仕事が増えれば、比例して会う機会も増えてくるのだろうが、
少なくとも互いのソロで忙しい時期は、こんなにも会えないものだろうか?と
一緒の仕事を指折り数えるくらい。

だからといって、会ったからどう…というのもないのだが、
不思議となかなか会えないとなると、無性に会いたくなるという
人間とはなんと不可思議な生き物なのだろうか。


そんな風に思いつつも何気に相方を待っていた剛の耳に、
突然、バタバタと廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。

一瞬、光一か?とも思った剛だが、
のんびりマイペースな彼がバタバタと走りまわる姿はほとんと見たことがないので、
すぐさま、その思考は打ち消された―のだが。



  バタバタバタッ!  ガチャッ!!



「剛っ!!」


けたたましい足音が、自分のいる楽屋前で止まったかと思うと勢いよく開いた扉。

その騒がしさに、煩げに音のする扉へと視線を向けた剛はしかし、
聴き覚えのある自分を呼ぶ声と共に息せき切って表れた人物に、思わず固まってしまう。


「…どうしてん、光一?」


どれほど急いで走ってきたのか、ドアを開けたものの息を切らして
一声発っしたその後が続かなかったらしい光一に、
呆気にとられながらも剛の方から声をかける。

すると。


何故か無言で、そしてひどく瞳を揺らして、
剛がドキリとするほどの、普段見られない頼りない表情をした光一がゆっくりと近付いてくる。

そして、何事かと光一を仰ぐ剛の眼前にそっと右手をのばし、
どこか遠慮がちにその頬に触れると


 「…よかった・・・」


吐息とともに、小さく洩らした安堵の言葉…



そんな突然の、光一のらしからぬ行動とセリフに思わずフリーズしてしまった剛だったが
勝手に自己完結したのか、頬に添えられた光一の手がゆっくりと離れていくのを見て、
剛は慌ててその手を掴むと、逆に引き寄せて問いただした。


「なんやねん、突然…」

「いや・・・」

「何がよかったん?」

「・・・」

「ゆうてみ?」



まるで小さな子供に話しかけるように、優しく瞳を見つめながら語りかける剛に、
光一は、いったん躊躇し飲みこんだ言葉を、促されるままにポツリポツリと話しだした。

「あんなぁ…」

「うん」

「夢みてん、めっちゃリアルな…」

「うん?」

「その…お前が死んでしまう夢…」

「……え?」

「目の前で突然倒れたお前を、咄嗟に抱きかかえて必死に呼びかけてんけど、
 どんどんと冷たくなってく剛の、その両手から伝わる体温があまりにリアルで―」

「・・・」

「飛び起きて、それが夢やとわかった後も、
 お前の冷え切った体温が、いつまでも両手に残ってんねん…
 そしたらもう~いてもたってもおれんくて、俺―」


自身の手のひらを見つめながらそう呟く光一を、
黙って聞いていた剛は突然、力いっぱいに抱き寄せた。


「!?…剛?」

「光一…感じるか?」

「え?」

「俺の体温、そして鼓動はしっかりと伝わってるやろ?」

「・・・うん」

「俺は、ちゃんと光一の目の前におるから」

「剛…」

「お前一人にして、俺、死ぬわけないやん」

「…うん」

「だから安心し…」

「そやな」

「うん」

「うん…」



耳元でそう囁く剛の言葉に、そして、合わさる胸から伝わる鼓動に光一はほっと息をつくと、
宙に浮いたままだったその両腕をそのまま剛の背中へとまわし、
そして―

両手に残った夢の感触を塗り替えるように、全身に命ある剛の温もりを今一度確かめる。


生きている・・・
こんなにも力強く鼓動を刻んで、
彼は、しっかりと自分の前に存在しているじゃないか。


自分の弱い部分を曝してしまったことに、少々の気恥かしさを覚えつつも、
そんな光一の弱さなんかとうに知っていただろう剛だから、いっそ素直になれる…


剛によって不安な思いにかられた光一だったが、
その不安ををぬぐい去ってくれたのもまた剛であって。
光一は今一度、彼に聞こえないように、そっと心のうちで呟いた・・・



    夢でよかった―

    ほんま…

    

俺を一人にして、死んだらあかんで。ツヨシ…











 

 


J-webのタヒチを読んで思わず剛君に変換した私(笑)
でもね、太一くんですら、不安で思わず声を聞きたくなった光ちゃんなんだから、
それが剛君だと、絶対本人を目で、体温を感じて確認しないと
不安でしょうがないんじゃないかと(笑)
勝手な思い込みだけど、でもその気持ちすごくわかるから♪
そんなリアルな夢はみてほしくないけど、
こんなシュチュエーションに萌えてしまう私でした(笑)

 

 

 

bottom of page