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とある楽屋内で突然、メールの着信音が鳴り響く。
自分のものだと気づいた一人が、さっそくそのメールをチェックすると―

「えっ!・・・やっぱりきたか」
「なになに?」
「更新されたって」

それを聞いて、その場にいた誰もが顔を見合わせて一様に頷き合う。
そして、早速とばかりに教えて貰った情報から、ネットへとつなげたその画面を、
周りにいたものたちもひしめき合って覗きこむ。


何故ならもちろん、更新されたというアレを確認するために。





 


「僕だけのSMGO」

 

 







二日目の舞台も無事に終え、自身の楽屋へと戻ってきた光一は、
いつもの場所へと落ち着き、疲れきったその体を投げ出していると。 

「光一君、お疲れ様です!!」

口ぐちにそう挨拶しながら、カンパニーであり事務所の後輩でもある総勢7名が
列を成して順次、楽屋に入り込んでくる。
そんな彼らに、嫌な顔一つ見せぬどころか、
満面の笑みで迎えながら「お疲れ~」と手を振る気のいい座長。

稽古場や舞台の上では、キッチリとした上下関係を保つ
素晴らしいカンパニーではあるが、
仕事を終えれば、仲のいい先輩後輩に戻るのが彼ららしい。


早速、先頭をきってやってきた一人が光一の傍へとやってくるなり、
「光一君、まだ読んでないでしょ?」と、その目の前に携帯を翳す。

突然、何事や!?と目をパチクリさせつつも、
素直に、その画面に視線を向けると。


『J-web?』


見覚えのある、自身のグル―プサイト画面には気がつくものの
それがどうした?とでもいうように首をかしげて見せる。

仕方がないとばかりに、「剛君が更新してくれてますよ!」と、伝えてやっと


『あぁっ!!Love Fighter』


その存在に気が付いた光一だった。


「やっぱり来ましたね~」
「くると思ってたんですけどね。」
「初日終わって一安心して、今日も頑張れよって感じでしょうか?」
「それもあるけど、もっと深いと思うよ~」
「うん、ものすごく言葉にならない気持ちが込められてると思う。」

などと、まだ読んでもいない光一の前で、
剛のメール文について論議を醸し始めた後輩達に、

「な~にをゆっとんねんっ!」と呆れ気味にツッコミつつも、

実のところ、その内容がちょっぴり気になってみた光一は、
テーブルに放り出していた自分の携帯を掴んでさっそく覗いてみる。

そんな彼の行動を、ジッと見守り、
その後の反応を心待ちにする後輩達だったが…


『・・・え?これだけ? 二行だけやん。』


なんだか不満そうにそう呟く彼に、

「いやいや。光一君に言われたくないでしょ、剛君は。」
「そこじゃなくて、もっと最初に感じるものが~」
「光一君らしいけどね~(笑)」

後輩たちもツッコミがまちまちである(笑)

しかし・・・


『ん~。。。でもちょっと気になんな。』


ふいに零れた予期せぬ言葉に、

「光一君も気になりますかっ!?」
「ですよね~!!」
「僕達の間では“あなた”=光一君だって結論付いてるんですけどね♪」
「やっぱり二人の絆ってステキですねぇ~」

と、途端に盛り上がる。

だが、そんな彼らには目もくれず、光一は何を思ったか…
ふいに携帯を弄り出すとそのまま耳に押しあてこう言った。


『わからん時はいっそ本人に聞いたらええねん。』


それには、ずらりと並んだ後輩たちも思わず声をあげた。

まさかの積極的発言&行動に、長い付き合いで、
彼の性格など手に取るようにわかってるつもりだった二人の後輩も、
この行動には驚きを隠せないっ!!

光一君ってこんなに素直で行動的な人だったっけ?と、視線で語りつつも、
一体どんな会話を繰り広げられるのかかなり気になり、
帰れと言われないのをいいことに、誰もが固唾を飲んで待つ事数秒。


『・・・あっ、剛おった?』


ほんとに剛君にかけてる…と、その信じられない状況に
ざわめく後輩たちを気にも止めずに言った言葉が―


『なぁ。今日、天気よかったん?』



「そっちかぁ~いっ!!」

と、コントのようにズッコける7人の後輩君。
そのあまりの見事なコケっぷりに、思わず「どした?」と彼らを振りかえる光一に
何やら電話向こうから囁いたようで。

『いや、皆おんねんけど、なんでか一斉にひっくり返ったで?』
『すごい音したやろ?』
『なんでわかんの?俺、さっぱりわからんわ~』
『えっ?あぁ・・・だから空見上げるほど、天気よかったんかな?思って。』
『ふふふ。なんで?』
『だって、俺が家出た時曇ってたもん。
 だから夕焼けでも綺麗やったんかな?とかさぁ』
『・・・あっそっかっ!』」
『俺、めったに更新せんからな~忘れてたわ…』
『うひゃひゃっ』

状況説明しだした光一ではあったが、なんだかんだで盛り上がってる…
それも、どう聞いてもかなり論点のずれてる会話に、
それでもちゃんと受け応えしている剛君はさすがだ―と、
後輩たちはいっそ胸を熱くする。

自分達でさえ、容易に想像つくようなメッセージでも、
この人には、なかなか素直に受け取って貰えない切なさを目の当たりにして
ちょっぴり彼へと同情しつつも、
でも、結局のところ自分達とは成り立つことはない、
彼ら独特の雰囲気と会話には、毎回、グループ同士以上の愛情を感じてしまう。

要は、惚気られてる…と感じた方がいいか。

彼らは逆に邪魔者的な雰囲気を悟り始め、目配せで合図を送ると、
光一に気づかれない様にそっと楽屋を出ようと目論んだが。

『あれ?もう帰るんか?』

と、気付かれて、思わず直立不動になる7人だった。

すると。

『え?ウチ?・・・おるよ?』


何やら、剛から後輩の名前が飛び出したようで、
光一は、素直に答えてみる。
名前をよばれた彼も、思わずあらたまって光一を伺うと。

『剛が、一カ月大変やろうけど、頑張ってな、やって。』
「あ、はいっ!ありがとうございます。」
『んで、わからんことがあったら、どんどんヨネハナやマチダを頼れやって』
「はいっ頼りにしています!」
『聞こえた~? ほんますごい頑張りやさんやから期待してるわ♪』


ここで、ふいに嫌な予感にみまわれた二人の後輩。

「俺たちを頼れって…もしや?」と小声で囁き合ってると
今度は、『ヨネハナ、マチダッ』と自分たちの名前を呼ばれたもんだから、
二人は「「ハイッ!!!」」と、裏返った声で返事をした。

『剛が、わかってるよな?…って言ってるけど―』
「「わかってますわかってます!!」」
『なんのこと?』
「いや、ものすごくわかってるんで、そう伝えてください!」
『マチダァ~?オマエもなん?』
「・・・・・」

光一にそう聞かれて、大きく潤んだ目を向けながら何度もうなずく彼。

『いつの間に、なんの約束してんねん…』

ちょっぴり拗ねたように愚痴りしつつも、
電話向こうの彼が、上手く話しを誤魔化したのか、
すぐにご機嫌になって、また二人への会話へと花を咲かす。

それを機に、7人は今のうちだとばかりに慌てて楽屋を飛び出した。



・・・



「そうだった…すっかり忘れてた。」
「うん・・・」

長年の付き合いで、剛の性格も手に取るようにわかってるつもりだったのに、
つい油断した上に、しっかり釘をさされてしまった彼ら達。

はぁ~と大きなため息をつくと、自分達に注目する後輩たちの中の一人、
今回からの新入りと向かい合うと改めてこう告げた。

「お前にさ、いい機会だから言っておくけど、
 座長ってさ、本番になると、こっちが勘違いしそうなほどにいつだって心ごとぶつかってくるだろ?」
「あっ確かに…」
「そして長期の舞台の幕が閉じる頃には、そんな座長の虜になって完璧に勘違いしてしまう後輩も数知れず―」

すでに、自分達もその一人だというように頷きあう6人。

「もうすでに遅いかもしれないけれどさ、これは芝居だと割り切って気持ちを切り替えた方が身の為だから」
「すごく意味深ですね。でも、わかる気がします。」
「だろ?」
「ねぇ・・・」
「こ~んなに想ってても報われない僕がいい見本…」
「お前こそ、もう諦めな…」
「あの、電話で話す幸せそうな光一君の顔みてたら、そんな心配する必要もないんだけどなぁ」
「ん~でも、やっぱり心配なんだろうなぁ」
「思わず、釘さすぐらいにね(笑)」
「・・・それにしても、天気よかったん?には参ったね」
「剛君も電話向こうで卒倒したんじゃ?(笑)」
「いや、剛君だから、全部予想してたんじゃない?」
「あはは、ありえるっ」
「なんだかんだで、離れていても、結局どこででも二人の仲を見せつけられるよね」
「そのとおり…」
「こんなに仲のいい二人組って…」

「「KinKiぐらいしか思いつかないね」」

と、誰もが深く頷き合ったそんな夜も更けていく。




そのころの、光一はというと―いまだ剛と電話中(笑)



…なんや急に静かになったな?…

『なんか、慌てて楽屋でていったでみんな。なんでやろ?』

…んふふふ。なんでやろな…

『まぁいいわ。しょうもない事で電話して悪かったな。』

…どんなしょうもない事でも、キミから電話貰えるのは嬉しい事ですよ。…

『・・・しょうもなくもないねんけどな…』

…それはよかった。…

『うん。』

…それよりも舞台。時期が時期やから体調崩しやすいけど、無理すんな。…

『わかってる。』

…食欲ないってゆって食べへんのはアカンで?…

『お前はオカンかっ(笑)』

…また痩せたやろ?―心配してんねん。…

『・・・』

…とにかく見てくれたんなら、よかった。

『うん。読んだ。』

…じゃあ、キミのもUPされるの待ってるから。…

『・・・・・はっ?』

…たまには更新しなさいよ。なんでもええねんから…

『え~・・・』

…一言でもなんでもかまわんやん。
 なんやったら、俺へのメッセージでもかまへんで?(笑)…

『う~ん・・・わかった…』

…おぉっほんまっ?…

『たぶん、気が向いたらね。』

…んふふ。いつになる事やら、やね。まぁ、期待せずに待ってますよ…

『うん』

…じゃあ、気いつけて帰りや…

『うん。じゃぁな…』



携帯を切ると、光一はまた体を投げ出して舞台後の余韻に浸る―つもりが…

剛の声が今も耳から離れない。

暫く、何事かを悩んでいたが、結局もう一度携帯を持ちなおすと、
光一は、無心に文字を打ち出した。




・・・




その頃の剛は、久々に光一の声を聞き、幸せに浸りつつ
布団へと潜り込んだその時に。

突然、枕元においていた携帯が着信を告げる。

慌てて開くと、そこには。



―え~、久々にメッセージを送ります。―


「んっふふふっ。なんでこっちやねん!(笑)」


剛の携帯に直接送られてきた光一からのメッセージに思わずツッコミつつも、
でも嬉しさはどうにも隠せず、喜々としてその先へと目を通す。


―健康に気をつけ、全力を尽くし頑張ります―


「・・・終わりかいっ…見事に2行やな。」


剛と同じく、2行で終わっているメッセージに苦笑しつつも、
全力で頑張るという彼を、応援したい気持ちは常に感じている。
怪我のないよう、無理のないよう、そう祈るばかり。

結局、催促したものではなかったが、それでも満足に浸る剛ではあったのだが―


「・・・ん?」


よく見ると、まだその下へとスクロールできるのに気がついた剛は、
その先へとドンドンと進めて行くとそこには―















―あなたを想って

 僕もときどき、空を見上げてみますー



   Show must go on 堂本光一 












それは・・・


僕だけに届いた君からのShow must go on。


僕たちは、どんなに離れ離れになろうとも、

同じ空の下、必ず繋がっているから。



大丈夫。


いつだって、傍にいる。


だからまた・・・




  「七夕に会おう」





                  fin





 

 

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